一般社団法人 熱海怪獣映画祭

団体概要

熱海は「キングコング対ゴジラ」(1962)の最終決戦の場になり、「大巨獣ガッパ」(1967)が上陸した場として描かれている。「平成ガメラ3部作」の脚本を執筆した伊藤和典氏も熱海に在住しており、怪獣とは所縁の深い土地である。

そんな熱海の地で2017 年に地元の有志が集まり企画されたのが「熱海怪獣映画祭」である。 伊藤氏も中心として参加しながら、地域内外のクリエイターが集まり、2018 年に第1回を実施した。 今後継続的に映画祭を行っていくために組織を一般社団法人化した。

ホームページ

https://atamikaiju.com/

2020年度
第3回熱海怪獣映画祭

事業内容

熱海市は明治時代のべストセラー小説「金色夜叉」の舞台として一躍脚光を浴び、観光都市へと変貌していった歴史がある。また、海と山と昭和ノスタルジックな風情ただよう町並みに惹かれ多くのクリエイターたちが、熱海のまちを舞台とした作品を発表するなど、怪獣コンテンツを活用した地域活性化には親和性が高い町である。

年間宿泊者数が300万人を超えて土日になると町には観光客が賑わうが、少し時計の針を戻すと、閑散として廃墟と化していた時期があった熱海。この好景気がいっときのものにならないように、継続的に地域に根づいていく新たな魅力の一つとして「怪獣の聖地」を目指している。

2020年度は、メインタイトルとして「キングコング対ゴジラ」(1962年)を上映、今年にハリウッド版の「ゴジラvsコング」が公開予定という話題もあって、熱海での上映は注目を引いた。そして熱心な怪獣ファンのみならず一般のお客様も惹きつけてやまない「全国自主怪獣映画選手権」、さらに「劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!」など新旧、プロアマ取り混ぜてのラインアップであった。昨年に引き続き大好評の「ゴジラ伝説 熱海絶対防衛ライブ PHASE2〜楽園の守護者」音楽ライヴはホテルニューアカオに場所を変えて、海と夜景の絶景を堪能できるロケーションはまさに怪獣映画音楽を楽しむにはパーフェクトな場所であった。トークショー、新怪獣お絵かきコンクール、動画コンテンツ配信「あたみ怪獣まち歩き」など映画以外のプログラムも豊富で、まさに「怪獣の聖地 熱海」を存分にアピールした内容であった。

 

開催日時

2021年3月12日(金)、13日(土)、14日(日)

会場

国際観光専門学校熱海校 ほか

《担当コーディネーターの振り返り》

最近、熱海が盛り上がっている。多くの観光客が訪れるようになった、というニュースはすでに周知の事実として知られているが、そのことではなく、アート関係の活動が次々と湧き出始めているのである。

文化プログラムのレガシーを引き継ぐアーツカウンシルしずおかでもいくつかの熱海をホームにしたプロジェクトが採択されている。中でもこの熱海怪獣映画祭は、まだ3回の開催ながらすでに熱海のアートシーンを牽引している存在と言えよう。

「怪獣映画」という誰しもがある種のノスタルジー、もしくは若い人には新鮮な響きを持つコンテンツの強さと、元々あった怪獣映画と熱海との関わり、そして昭和を感じさせる街の空気が絶妙にマッチし、さらにこの映画祭に関わる人たちの熱量や、自らが心底楽しんでいる様子が十分に観客にも伝わって、怪獣映画の熱狂的なファンでなくとも街にとって「気になる」存在として徐々に地元に伝染していっているように感じる。12店舗を超える飲食店が「応援メニュー」として提供・参加していたり、協賛スポンサーも地元企業やお店、メディアが名前を連ねていることからも、徹底的な地元との関係づくりにこだわっている様子が見えてくる。

また映画祭に来訪するクリエイターとの関係も大事にし、そこから生まれるアイディアも積極的に取り入れ、どんどんと映画祭の形態も変化を遂げて行きそうな予感だ。2020年度は怪獣映画ではないが、熱海で撮影された「熱海モンスター」という自主映画もスピンオフ企画として上映された。過去の怪獣映画の名作上映だけでなく、クリエイターにとって熱海怪獣映画祭がまさに新作のインスピレーションや披露の場として機能し始めようとしている。

 

                                 (佐野直哉)

2019年度
「熱海を怪獣の聖地へ」
第2回熱海怪獣映画祭

熱海市は明治時代のべストセラー小説「金色夜叉」の舞台として一躍脚光を浴び、観光都市へと変貌していった歴史があります。また、海と山と昭和ノスタルジックな風情ただよう町並みに惹かれ多くのクリエイターたちが、熱海のまちを舞台とした作品を発表していて、怪獣コンテンツを活用した地域活性化には親和性が高い町です。

年間宿泊者数が300万人を超えて土日になると町には観光客が賑わうが、少し時計の針を戻すと、閑散として廃墟と化していた時期があった熱海。この好景気がいっときのものにならないように、継続的に地域に根づいていく新たな魅力の一つとして「怪獣の聖地」を目指します。

往年の怪獣映画や新作の怪獣映画を上映、熱海に怪獣ファンを集客し「怪獣の聖地 熱海」をアピールします。また 怪獣映画のシンポジウムも実施して、怪獣映画のクリエイターを招致し、怪獣映画情報を発信し、怪獣映画制作の人材の交流の場としての役割も担います。 また怪獣映画に関連したライブも実施し、怪獣ファンのみならず地域住⺠にも楽しめるイベントにするほか、実施期間は3日間ですが、事前期間から地元事業者と協業し、地域振興につなげていきます。

《担当コーディネーターのふりかえり》

近年、熱海には多くの観光客が訪れ、移住者と地元の人たちが渾然と交じり合いながら、様々なアイディアを次々と具現化させていく、街としての懐の深さが活性化に結びついている。そのような意味で「地域再生」において模範的とすら感じる街である。一歩路地を入れば、昭和の薫りが色濃く残り、そうしたギャップも創造力を掻き立てる。本プロジェクトはこの街に魅かれて移住してきた芸術関係者と、もともと地元に長く住む人たちが、偶然酒の席で盛り上がった話が現実化したプロジェクト、というなんとも痛快なエピソードを持つ。

実は熱海市には映画館がない。それまで残っていた唯一の映画館は現在は観光専門学校の校舎に変わったが、本映画祭はその専門学校をハブとして、熱海とゆかりが深い「怪獣」をテーマに、映画上映にとどまらない、誰もが楽しめる方法を模索してきた。例えば怪獣映画「音楽」ライヴ、子どものお絵かきコンクール、商店街とのタイアップによる「怪獣」メニューの開発、地元企業に限定した協賛、商店街の中にある宿泊施設での怪獣ファンとの交流会、地元や県外からのボランティア、地元の人たちを対象とした月1回の説明会の実施など、怪獣映画ファンだけでなく、地道に、あくまで地元から支援される映画祭としての姿を追求してきた。そうした姿勢も相まって、地元の人たち、移住者、外の人たちを「怪獣映画」という、ある程度の年齢には郷愁を誘い、若い層には逆に新しさを感じるコンテンツでフラットにつないでいったのである。これがまだ2回目なのに怪獣映画ファンだけでなく、地元からの多くの来場者と熱烈な支持に結びついたのだ、と言えよう。

「熱海を怪獣の聖地へ」に向けて着実に歩み始めている。

(佐野直哉)