御殿場市東山旧岸邸

団体概要

東山旧岸邸は、首相を務めた岸信介の自邸として1969(昭和44)年に建てられました。その後、30年ほどのときを経て、2003(平成15)年に御殿場市に寄贈されたあと、一般公開されました。2009(平成21)年からは、和菓子の虎屋のグループ会社である株式会社虎玄が指定管理者として管理運営を行なっています。建築家・吉田五十八の晩年の作品であるこの邸宅は、施主・岸信介の生活に配慮しつつ、伝統的な数寄屋建築の美と、現代的な住まいとしての機能の両立を目指して設計されました。

ホームページ

https://www.kyu-kishitei.jp/

2019年度
「伝統芸能と食文化~伝統文化の継承を考える~」

2019年度の伝統芸能講座は「伝統芸能と食文化」と題して開催しました。
とらや工房では茶懐石「温石」店主・杉山氏がつくる静岡の食材を活かした点心をお召し上がりいただき、東山旧岸邸では改元を祝して、元宮内庁式部職楽部首席楽長による解説とともに、慶事に演奏される雅楽を披露しました。
分野や様式が違っていても共通する「こころ」や「かたち」に触れ、日本の伝統文化について考えるひと時となりました。

■日程:令和元年10月8日(火)

■時間:昼の部 12時~15時 / 夜の部 18時~21時 ※夜の部はライトアップをします。

■会場:点心席 とらや工房 / 雅楽演奏会 東山旧岸邸

■定員:各回60名 事前予約制 ※先着順

■参加費:昼の部 6,500円 (税込)満席夜の部 7,000円 (税込)満席

※ご好評につきキャンセル待ちも定員に達しました。お申込ありがとうございました。

《担当コーディネーターのふりかえり》

地域に残る重要な文化資源を保存しながら、いかに活用していくか。伝統芸能がこれまで脈々と受け継がれてきている一つの理由は、文化芸術に宿る大切な価値を守りながら、時代性に合わせて柔軟に変化し、社会と上手く付き合う「したたかさ」と「強さ」である。そのような意味で、東山旧岸邸の取り組みは今後の文化施設運営と指定管理者の在り方を考える良いきっかけとなったプロジェクトである。指定管理者として、これまで受け継がれてきた地元の文化資源を調査・研究しつつ、地域の声や社会の文脈を取り入れ、「今を生きる文化施設」として意欲的に数々の企画を発信し続けている。

本企画「伝統芸能と食文化〜伝統文化の継承を考える〜」では、地元の茶懐石「温石」店主・杉山氏が作る静岡県の食材を活かした点心に、敷地内にある「とらや工房」の創作和菓子を組み合わせて、令和の始まりに相応しい雅楽の演奏と解説と共に提供した。さらに杉山氏、とらや工房のパティシエら本企画関係者による「伝統文化の継承」を考えるトークも実施した。本イベントは食材の現場視察や地元生産者との密接なコミュニケーションを通して、協働で作り上げていくプロセスを丁寧に踏んだ上での実施であった。そうした交流によって、食文化における地域資源の発掘に結びついたことが成果である。本イベントをきっかけに、一過性のイベントで終わらない伝統芸能と地域の接続の形や、「文化継承」を今度は参加者や地域の人たちと共に考えていく場の設定など、今後の持続的な企画と発展が期待される。

(佐野直哉)