原泉アートプロジェクト

団体概要

「原泉アートデイズ!」は、静岡県掛川市北部に位置する原泉地区でアーティストインレジデンスを開き、滞在したアーティストたちの制作のプロセスから展示作品の発表までを総称したイベントである。
以下を目的として活動している。
1. 現代アートを通じて、地域の魅力を引き出す
2. 空きスペースを利活用し、地域を活性化する
3. 持続可能な地域社会を実現する
4. 未来につながるアーティストの拠点場所づくり

ホームページ

https://haraizumiart.com/

2020年度
原泉アートデイズ!〜不完全性〜

事業内容

2020年度は、多くのアートイベント開催団体が中止や延期の判断を下す中、緊急時代宣言中の5月6日に開催宣言を行ったことで、参加アーティスト・地域・関係者との信頼関係が強化された上で、秋の開催に至った。

また現地での開催が難しい場合でも、表現の場を生み出し続けるため、「想像する展覧会」を企画した。「想像する展覧会」は、郵送によって制作のアイディアからプロセス、完成していない作品など4回かけて参加者のご自宅に12組のアーティストの作品の一部を月1回送り届け、受け手の想像力とともに作品を完成させる展覧会である。全国から100名を優に超える応募があり、大きな反響を得ることができた。

また海外のアーティストともオンラインにより遠隔アーティストインレジデンスを実現、5月から11月にかけて繰り返しおこなったオンラインセッションにより、2組のアーティストと移動せずに国境を超えたインスタレーションを実現させた。

 

日時

2020年10月15日(木)〜11月15日(日)10:00-16:00 月・火・水休み

場所

掛川市北部原泉地区全域(旧掛川市JA原泉支所、旧田中屋、旧原泉第2製茶工場、昌光寺、居尻レジデンス、ならここキャンプ場回帰館、大和田〜孕石県道、萩間の風景、ツリーハウス)

参加費

自由/完全ドネーション制

参加アーティスト

12組

《担当コーディネーターの振り返り》

本プロジェクトは、全国の多くの中山間地域と同様の人口減少、高齢化、空き家、茶産業の担い手の減少などの課題を抱えている一方で、新幹線掛川駅からも車で20分、新東名からも15分、美味しい農産物や温泉、人気の牧場やキャンプ地などを擁し、地域資源のポテンシャルは高い。

2018年の初開催以来、月日は浅いものの、地域と関係づくりやアーティストとの対話を重要視してきた結果、2020年度はコロナ禍だからこその原泉らしい結果を残せた年となった。従来のアーティストインレジデンスの形態が取りづらくなっても思考を止めず、これまでの「対話」から違った形の「対話」の形を模索した結果、ひとつは主催者とアーティストの対話から生まれるプロセスの変遷を、参加者との対話として変換しオープンにしていく試みの「想像する展覧会」が生まれた。オンラインが盛んな今に敢えて郵送、という形を取ったことで、仮にアートデイズ!自体が開催できなかったとしても、プランBとして機能する、という戦略もあった。しかし収穫だったのは、#(ハッシュタグ)を介して制作途中のアーティストや主催者と参加者の対話も生まれ、参加者の想像力を全幅に信頼し、委ねたことで地域型イベントのサイトスペシフィック性(その地域に来て体験する特異性)やコミュニティ概念に対する原泉ならではのアプローチを見出したことではないだろうか。

逆に海外から参加の作家たちとの対話はオンラインを駆使した。というのも来日が不可能になったことからその作品制作は原泉の子どもたちや現役世代が担うこととなったからである。20名の子どもたちが作家とオンラインでつながり、制作を協働することで、これまでのアートデイズ!と地域との関わりに多様性が生まれ、逆に子どもたちが学校で作っている作品をアートデイズ!の受付場所にて展示することの地域サイドから働きかけがあるなど、じわじわと地域とのつながりを強めていることが可視化されたことも収穫であろう。

今後は、アーティストインレジデンスを通した対話を多方面に開いていく試みをさらに発展させつつ、それが原泉を観光地として訪れる人たちとの恒常的な接点として機能するようになると、原泉アートプロジェクトが掲げる「持続可能な地域社会の実現」、つまり世代や価値観を大きく超えた人と人の交流を生み、より豊かで多様性のある新時代における原泉地域での暮らし方を自分たちで創り出すことの実現に近づくのではないかと感じている。

 

                                (佐野直哉)

2019年度
原泉アートデイズ!2019〜泉とともに〜

原泉アートデイズ!は、様々なアーティストによる「作品展示とパフォーマンス」、作品や各種グッズを販売する「アートストア」、アーティストと触れ合い学ぶ「イベント&ワークショップ」からなる複合的な現代アートイベントである。

2019年度は10月に開催したメインイベントの他に、9月にプレイベントとして「使われなくなった茶工場で観る NIGHT THEATER」や、毎月1回の食堂イベントなど、年間を通じて活動することで、地域のプロジェクトへの理解促進に力を入れている。

メインイベントでは地域内外のアーティスト10組が参加し、原泉地区での滞在制作をベースに、絵画、彫刻、インスタレーション、映像、演劇など多様な作品を発表した。展示にあたっては、旧茶工場、旧JA、旧駄菓子屋など地区内の空き施設や空き家を地域資源の一つとして捉え、積極的に活用することで地域振興にもつなげている。

会 期

2019年10月24日(木)〜11月10日(日)10:00〜16:00 火・水休み

会 場

掛川市原泉地区全域

観覧料

自由(投げ銭式)

主 催

原泉アートプロジェクト

共 催

静岡県文化プログラム推進委員会

協 賛

しばちゃんランチマーケット、ならここキャンプ場、掛川市森林組合

協 力

資生堂企業資料館、原泉地区まちづくり協議会、原泉農事茶業組合、さくら咲く学校、Festival de Frue

後 援

掛川市文化振興課

《担当コーディネーターのふりかえり》

「原泉アートデイス!」はアーティスト・イン・レジデンスをベースとし、アーティストが一定期間原泉地区に滞在することで、ディレクターや運営メンバーとの議論を重ねながら作品制作したり、地域の人や自然と関わり合ったりすることを徹底して行なっています。これにより、参加するアーティストには、自身が地域とどのように関係していくかについて深い意識が生まれ、作品としての強度も上がっているのだと感じます。その成果として、ここで制作された作品が現代アートのコンペティションで大賞を受賞しました。

そして、空き施設を活用した成果として同団体以外の活用が始まったり、建物の持ち主を通じて若年層のサポーターが生まれたりするなど、場所の変化だけでなくその場所にまつわる人の変化も見ることができました。本プロジェクトの面白みが着実に地域の人々に浸透してきているからこそではないでしょうか。

そして、本プロジェクトの最大の特徴として、自らの手で持続可能なプロジェクトを作り出そうとする姿があげられます。助成金等の既存制度を活かしつつも、自分たちの最適な運営のあり方を見出すため、ドネーション(投げ銭)とアートストア運営に力を入れ、原泉地区の魅力を感じた人がプロジェクトのファンとして関わることができる、関係人口の創出を目指しています。

(立石沙織)