一般社団法人 Meets by Arts
団体概要
アートの意義を「異なる価値観や視点を持った表現に出会う機会の創出」であると捉え、熱海という地域がアートの根付くまちとなることを目指し、地域とアートをつなぐ各種コーディネート業を行う団体。任意団体として2019年に発足、2020年1月に一般社団法人化した。
2018年度に開催された「アーツプロジェクトスクール@ATAMI ART FAIR」(主催:特定非営利活動法人atamista)の後継事業となる「Meets by Arts」を2019年度からスタートさせ、アートプロジェクトの企画立案を学ぶ短期集中型スクールプログラムの実施を通して、持続可能なアートプロジェクトを企画・運営できる人材の育成に取り組んでいる。
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2020年度
Meets by Arts @ATAMI
事業内容
「Meets by Arts @ATAMI」は、仕事や活動等で本格的にアートプロジェクト企画・実施していきたい人に向けて、熱海を題材にした企画を考える場を提供するスクールプログラムである。
2020年度は9名の受講生が参加。熱海市内にある2つの施設「アカオハーブ&ローズガーデン(※1)」と「熱海アートサイト(※2)」を題材に、その場所で実現したいアートプロジェクトを企画した。
※1:ホテルニューアカオが経営する広大なローズ庭園を有した観光施設。
※2:個人が所有するビルの一角をリノベーションしたアートスペース。当時はオープン前の状態だったため、仮のスペース名として「熱海アートサイト」と設定。2021年5月に「Article Atelier & Gallery」としてオープンした。
タイトル
Meets by Arts @ATAMI
スクール実施期間
2020年11月〜2021年1月
内容
事前学習:2020年11月19日(木)~12月3日(木)
合宿❶:2020 年12月5日(土)
自主ワーク:2020年12月6日(日)~2021年1月8日(金)
合宿❷:2021年1月9日(土)~1月11日(月)
実施方法
オンライン
受講生
9名
講師(メンター)
熊谷薫 氏(アートマネージャー/コンサルタント)
平井宏典 氏(和光大学経済経営学部 准教授/博士(経営学)/真
鶴まちなーれディレクター)
主催
一般社団法人Meets by Arts
《担当コーディネーターの振り返り》
昨年度と大きく異なる点として、今年度はコロナ禍の影響により、これまでこだわってきた「現地合宿形式」ができない状況に見舞われた。Meets by Arts事務局で毎年頭を悩ませながら考えているカリキュラムも、「オンライン形式」に切り替えるための試行錯誤が加わったことで、開講直前まで細かな微調整が続いた。
今回の特徴として、従来の受講生を複数に分けてチームごと企画をつくるやり方ではなく、受講生が一人ずつ自分の企画を考えるスタイルに変更したことが大きい。個人作業に集中するための時間、メンターとの相談や受講生同士で共有し合う時間など、意識的に組み合わせたことで、受講生は自分のペースで企画作りを進めることができた。
これらのスタイルは、短期集中型の当スクールが一番大事にしている「どんなことを実施するか」ではなく、「どんな目的で実施するのか」や「その活動を通して何を伝えたいのか」を明らかにする上で効果的に機能していたと思う。熱海という地域性や、題材としている施設の特性はもちろんのこと、受講生自身の内面を深掘るプロセスを繰り返して企画のコンセプトを練り上げていく。受講生アンケートには「『なぜ?』ということを(自分自身に)徹底的に問い続けることの重要性を知ることができた」、そして「取捨選択が苦手な自分に改めて気付くことができた」とのコメントもあり、受講生自身にも変化があったことが見てとれる。
この今回受講した9名に常に寄り添い、個別のニーズや思いを丁寧に受け止め柔軟にフォローを入れたメンターとMeets by Arts事務局。この伴走体制も当スクールの大きな特徴と言えるだろう。9名のうち数名は、2021年度の企画実現に向けて動き出した。アートプロジェクトは企画して終わりではなく、実施してはじめてその喜び、楽しさ、やりがいを感じることができる。そして、その実現に至るまでには、まだまだたくさんのハードルがあるだろう。だからこそMeets by Arts事務局が、彼ら受講生のいつでも頼れる相談役として、また彼らと熱海をつなぐ橋渡し役として、これからも継続して活躍してくれることを期待したい。
(立石沙織)
2019年度
アートプロジェクトの「始め方」と「続け方」の学校
「Meets by Arts@ATAMI」は、静岡県熱海市のまちを舞台に、アートプロジェクトの企画立案を学ぶ短期集中型のスクールである。2018年度開催された「アーツプロジェクトスクール@ATAMI ART FAIR」をきっかけとし、持続可能なアートプロジェクトの実現を通して、熱海という地域がアートの根付くまちとなることを目指している。
2019年度は、アートプロジェクトを手がける際に重要な「始め方=地域のリサーチ」と「続け方=企画の振り返り」に特化した独自のカリキュラムをたて、計3回の合宿(企画立案の演習)を行った。
より具体的な事例で実践的に学ぶ工夫として、熱海で実際に行われているアートプロジェクトや受講生による持ち込み企画を、企画テーマに設定した。そして、現場の第一線で活躍している熊谷薫氏(事業評価コーディネーター)と平井宏典氏(和光大学経済経営学部 准教授/真鶴まちなーれディレクター)をメンターとし、事務局とともに受講生に伴走支援を行うことで、充実したサポート体制を組んだ。
受講生による3つの企画は、2月に最終発表会&シンポジウムにてプレゼンテーションが行われた。
タイトル
Meets by Arts:アートプロジェクトの「始め方」と「続け方」の学校
スクール実施期間
2019年12月〜2020年2月
内容
合宿①:2019年12月14日(土)〜12月15日(日)
オリエンテーション、持ち込み企画の提案、レクチャー、懇親会、ほか
合宿②:2019年12月16日〜2020年1月31日(チームごとに1〜2日間で設定)
リサーチ
合宿③:2020年2月1日(土) 〜2020年2月2日(日)
グループワーク、中間発表、最終プレゼン、シンポジウム
参加者数
スクール受講者数:12名
シンポジウム参加者数:38名
メンター
◇熊谷薫 氏(事業評価コーディネーター)
◇平井宏典 氏(和光大学 経済経営学部経営学科 准教授 / 真鶴まちなーれ総合ディレクター)
12月15日レクチャー・講師
◇永田 雅之氏(一般社団法人 熱海怪獣映画祭代表理事/映像ディレクター)
2月2日シンポジウム・ゲスト
◇芹沢高志 氏(都市・地域計画家 / アートディレクター / P3 art and environment統括ディレクター)
◇加藤種男 氏(静岡県文化プログラム チーフ・オペレーティング・ディレクター)
主催
Meets by Arts@ATAM実行委員会
《担当コーディネーターのふりかえり》
Meets by Artsが考えるアートの役割とは、「異なる価値観や視点と出会う機会を創出すること」。アートが地域に根付くことによって、観光だけに頼らない新しい地域資源を発掘する可能性を持っているという考えが根底にあります。
他のプログラムに比べて参加者は小規模ながら、地域内外から集まった12名の受講生がチームごとに熱海やアートについて喧々諤々議論する中には、地域の人々は見過ごしているかもしれない熱海の魅力がたくさん詰まっていると感じます。
人材育成事業は長期的な視点が不可欠です。ここで生まれた「種」がどのように受講生個々人の中で「発芽」するかは、スクール事業自体がはじまったばかりの今は、まだあまり見えていないかもしれません。しかしながら、本スクールがコツコツと継続されていくことで、ここ熱海を自身の活動フィールドとして捉えられる人を一人でも多く生み出し、熱海に関わる人とプロジェクトが多様化していく可能性に期待します。
(立石沙織)