しゃぎりフェスティバル実行委員会
団体概要
三島市で450年続く伝統芸能「しゃぎり」を永続的に発展させるため、各町内会のしゃぎり保存会が会員となり、①周囲の理解、②自己研鑽、③後継者育成の三要素を柱とした事業を行う団体。鉦(かね)、太鼓、笛を使った祭囃子である「しゃぎり」を祭りから切り離し、「しゃぎり」だけに特化させたフェスティバル「しゃぎりフェスティバル」の開催が活動の中心に、「しゃぎり」の魅力を広く伝える活動を行う。
2020年度
第四回しゃぎりフェスティバル
事業内容
2020年度はコロナ禍によって「三嶋大祭り」が中止となり、練習自体自粛せざるを得ない期間が長く続いた。さまざまな葛藤の上で練習を再開した際も、オンラインを活用した練習の実施や、演者のためのオリジナルマスクの考案など、さまざまな工夫を凝らし、伝統が途絶えないよう取り組んだ。
1.「第四回しゃぎりフェスティバル」の開催
工夫の成果が、2020年11月8日に三島スカイウォークで開催された「第四回しゃぎりフェスティバル」につながった。この日は合わせて9町内が参加し、演奏する側やその演奏を支える側として活躍した。富士山を背景にした大きな吊り橋の上で、同じ「三島」といえども文化のちがう、複数の町内が手を取り合って“共(協)演“する場をつくることができた。
2.「しゃぎり」の魅力を伝える動画の制作
町内ごと自分たちの「しゃぎり」について語った動画制作も行った。自らが演奏している様子を見ながら好き勝手に語ることを通して、一つの伝統芸能に真剣に取り組む人々の思いを伝えるとともに、町内ごとの特徴や価値観の違いを浮かび上がらせている。
Youtubeリンク
《担当コーディネーターの振り返り》
静岡県三島市の伝統芸能のひとつである「しゃぎり」は、鉦(かね)、太鼓、笛を使った祭囃子(まつりばやし)を指す。その歴史は、起源となる「お囃子」の発祥から数えると約450年、「しゃぎり」自体が生まれてからは約220年が経過していると言われ、市内の最も大きな祭事である三嶋大祭りや、各町内のお祭りや行事ににぎやかな華を添えてきた。現在も市内約7割の町内で保存会を持ち、この「しゃぎり」を中心としたコミュニティが、地域の防犯・防災等で重要な役割を担っているという。
その一方で、首都圏からの人口流入や少子高齢化等の時代の変化により、「しゃぎり」に対する地域住民の認知度が低下し、継承者が不足しているという課題もある。そのような中で2018年に設立した「しゃぎりフェスティバル実行委員会」は、サイロ化したコミュニティのなかにある「しゃぎり」を、一つの芸能として集めてパッケージ化し、「しゃぎり」の魅力を広く伝えていく活動に取り組んでいる。
お祭りとは本来、他人(観客)に見せるための文化ではなく、自分たちの五穀豊穣や安全を祈るための、自分たちのための文化であった。「しゃぎりフェスティバル実行委員会」では、こうした「自分たちのもの」を外にひらいて共有していくことで、隣あう町の文化に出会い、互いの文化を認め合う土壌を育んでいる。
(立石沙織)
2019年度
第3回しゃぎりフェスティバル
1 第3回しゃぎりフェスティバル開催
参加各町による演奏に加え、しゃぎりの衣装である浴衣のファッションショーや、しゃぎりの理解を深める講座コーナー、会場参加型で盛り上げる演出も取り入れた。開催に向けて、日本語、英語のチラシを三島駅周縁のホテルに配し観光客の取り込みにも一定以上の手ごたえがあった。当日の受付やアンケートも英語対応し、事前に準備した魅力伝達の道筋が成果をあげた。
日 時
2019年9月15日(日) 13:00~20:30(開場12:30)
会 場
三島市文化会館大ホール
参加者
766名
2 しゃぎりPR映像制作検討と予告映像作成
《担当コーディネーターのふりかえり》
どれだけ見栄えのするお祭りだとしても、参加する楽しみは観客のそれとはまったく別物でしょう。「しゃぎりフェスティバル実行委員会」のみなさんを見ていると、そのことを痛感させられます。とにかく本人たちが楽しそう。
残すこと、次世代につなぐこと、伝統芸能に関わる時、そうした使命感にかられることはよくあります。その地域に長く伝わるもの、それはそれだけで大事なことです。しかし一方でつなぐ人たちも社会生活を営む人間です。いろいろなことをなげうってできることにも限りがあります。
それを残したいのは、長く続いているからなのか、先代たちもそうしてきたからなのか、自分もいいと思うからなのか、楽しいからなのか、折に触れて頭をよぎらせていいことだと思います。少なくとも、頭ごなしに「そういうものだから」と言っていては文化はつながっていきません。人の生活とともにあるものですから。
「楽しい」の体現に加えて、自分たちの大事にしているしゃぎりの要素をしっかりと分析し、無理のない企画に落とし込む。しかし毎回挑戦の要素も加え、さらに楽しむ。しゃぎりフェスティバルでは、文化を継続するための楽しむ姿勢が垣間見れます。
(鈴木一郎太)