焼市(やいち)

団体概要

港まち焼津の象徴「大漁旗」や「魚河岸シャツ」をモチ―フとした「ものづくり」をおこない、その背景にある、先人たちから受け継いできた「おもてなしの心」を、近年、増加している訪日外国人はじめ来焼される人々に伝えることを目的としている。

2020 年度
「港まち文化プロジェクト 〜焼津流おもてなしを世界へ〜」

事業内容

『大漁旗てぬぐい』の制作

『大漁旗シール』の制作

写真をもとに歴史を繋ぐ「港まちやいづ物語」』

《担当コーディネーターのふりかえり》

静岡県文化プログラムの実施団体のみならず、世界中の文化・芸術活動が日に日に萎縮して行く中、自らの暮らしに根付く文化や芸術活動、経済活動、人と人の繋がりを萎縮させない方法を誰もが模索していただろう。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックで訪日する外国人へのおもてなしとして想定されていた事業も、訪日外国人が見込めなくなり対象を変更せざるを得ない状況となった。国際的なイベントを契機に地域への関心を「外から」集めることを想定していたものは、必然的に地域の「内から」の関心へと目的を変えることが求められることとなった。

当初は焼市もオリ・パラでの訪日客を焼津市に呼び込むべく、港まちの象徴とも言える「大漁旗」や「魚河岸シャツ」をアレンジした手ぬぐいや新しいシャツを文字通りフラッグシップとして地域住民で着用し、「日本の港まち」をアピールすることを狙っていた。しかしながら事業を進める準備の段階で、参加者が手ぬぐい等を着用する予定としていたスポーツイベントなどが延期、延期、中止となり、手ぬぐいを披露する機会を失ってしまった。

手ぬぐいや新しいシャツに込めようとしていた思いは、何だったのだろうか。波や魚などの独特の「柄」として目に見えるものなのか、港で築き上げられた「結びつき」や「感謝の気持ち」のように目に見えないものなのか。

ウィルスという全く想定していなかった要因に、大いに振り回されることにもなったが、反面基本に立ち返りじっくりと考え抜く機会ともなったのではないだろうか。

皆がそろって新しいシャツを着ることはできなかったが、お馴染みの「柄」を染め抜いた手ぬぐいを配布し、皆が「豊か」になることを祈ったという。簡素な木綿の布を染める模様が、「柄」から「結びつき」へと人の手によって変化する瞬間である。きっと、これが「文化」ならではなのだろう。

(北本麻理)