特定非営利活動法人 クロスメディアしまだ

団体概要

クロスメディアしまだは、『スキだらけのマチづくり』をコンセプトに、静岡県島田市周辺の地域づくりに取り組むNPO法人。近年その活動の主軸となっている「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川」は、「無人駅が開くと地域が開く」をテーマとして、大井川鐵道沿線の無人駅とその周辺にある集落を舞台に開催する芸術祭である。

ホームページ

http://unmanned.jp/

2020年度
UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川2020

カトウマキ《封を開ける》(福用エリア) 撮影:鈴木竜一朗 県内在住のカトウ氏は、市内小学校でワークショップを実施。会場ではカトウ氏の作品に加え、子どもたちの作品も展示された。

事業内容

2020年度は、コロナ禍のあおりを受けて多くのイベントが中止や縮小化を行う中、「UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川」は感染症対策を徹底した上で参加アーティスト数を前年度の10組から16組へと増やし、会期を例年以上に日数の多い2021年3月6日(金)から同月28日(日)までの計24日間するなど、事業の拡大と分散を行った。

島田市と川根本町という二つの行政区をまたぐ6つの無人駅(代官町駅、日切駅、福用駅、抜里駅、塩郷駅、下泉駅)と、4つの集落(日切エリア、福用エリア、抜里エリア、塩郷・久野脇エリア)を舞台に、アーティストが地域でリサーチしたことをもとに制作した作品を発表した。

今回からは新たに「アートプラット/大井川」をスタートさせた。これは、住民自ら企画者となって実施するイベントのプラットフォームであり、住民参加を応援する仕組みの一つである。芸術祭への「参加」に対する間口の広さ、方法の多様さがこの芸術祭の特徴であり、住民の生きがいや「おらが作品=わたしたちの作品」という意識、地元に対する思いを深めるきっかけにつながっている。

タイトル

UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川2021

会期

2021年3月6日(金)〜3月28日(日)【計24日間】

会場

大井川鐵道の無人駅とそこから広がる集落(静岡県島田市・川根本町)

参加作家
(五十音順

安部寿紗、形狩り衆、カトウマキ、木村健世、小鷹拓郎、小山真徳、さとうりさ、三本木歓、澁木智宏、ナカムラマサシ、夏池篤、ヒデミニシダ、ひびのこづえ、村上慧、歪んだ椅子、力五山(加藤力・渡辺五大・山崎真一)

来場者実績

総来場者数11,336人、総回遊数51,012回
※昨年度の総来場者数は4,275人、総回遊数は18,525回。

主催

特定非営利活動法人クロスメディアしまだ

支援

静岡県文化プログラム推進委員会

協力

大井川鐡道株式会社、島田市、川根本町

助成

福武財団「アートによる地域振興助成」
島田市「アートによる地域づくり推進事業」
ふじのくに#エールアートプロジェクト

公式サイト

http://unmanned.jp/

さとうりさ《地蔵まえ4(縫い合わせ)》(抜里駅エリア) 撮影:鈴木竜一朗 オンラインを通じてさとう氏と交流しながら、作品の「縫い合わせ」を行った地域住民の人々とその作品。
ニシダヒデミ《境界の遊び場Ⅱちゃばらのカーテン》(抜里駅エリア) 撮影:鈴木竜一朗 地域住民からの要望により、本作品はここに恒久設置されることとなった。
小山真徳《盃と沢蟹》(抜里駅エリア) 撮影:鈴木竜一朗 当該地区に伝わるデイダラ坊の伝説から、この巨人が使っていたであろう盃が大井川の河川敷に流れ着いた光景を表現。竹で制作した巨大な盃は、地域住民の協力を得て設置した
小山真徳《盃と沢蟹》(抜里駅エリア)*制作時の様子

《担当コーディネーターの振り返り》

国外はもとより国内でも移動制限が敷かれたことで、県外から訪れるアーティストによる滞在制作はこれまで通りにはできなくなるなど、「県域」や人と人の間にある「境界」をこれほどまでに意識する年はなかったはずだ。

「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川2021」では、地域住民がオンラインを通して県外アーティストの手足や脳となって作品をつくりあげたり、県内を拠点とするアーティストたちが小学校で出前ワークショップを行ったりするなど、このような時代においても表現することの大切さを分かち合う機会を絶やさず、むしろ積極的に表現活動を支援していく姿勢が印象的だった。そこで発表された作品は、直接的な接触がなくとも人と人が交流できる方法を模索したものや、雄大な風景を感染症拡大のリスクを抑えつつ味わおうとするものなど、今の時代だからこそ生まれる表現の可能性を示していた。

過疎化による「無人」、AI化に伴う「無人」、そしてコロナ禍による「無人」。「無人」という言葉が社会全体を重苦しい空気で包もうとしている今、アートだからこそ私たちが無意識的に持っている「常識」や、それを作り上げてきた「評価基準」を、ぐるっと転換させることができるのではないだろうか。

「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川」は、都合いい言葉に一括りにしようとする大きな流れに争い、その言葉の裏で見失っていく風景をひとつひとつ丁寧に掬い上げて、アーティストの新しい表現へとつないでいる。そして、実際はこの循環を最も力強く支えている、外からは見えにくい人々の存在(「無人」の存在)こそが、この芸術祭の一番の魅力なのだと私は思う。

(立石沙織)

 

2019年度
UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川2020

江頭誠《間にあるもの》

3回目を迎えたUNMANNED無人駅の芸術祭/大井川は、これまでの芸術祭に引き続き「無人駅が開けば地域が開く」をテーマに、大井川鐵道の無人駅6駅(代官町駅、神尾駅、福用駅、抜里駅、塩郷駅、駿河徳山駅)と3つの集落(福用エリア、抜里エリア、塩郷・久野脇エリア)を舞台に、計17日間開催した。

国内外で活躍する13組のアーティストが参加し、無人駅とそこから広がる集落の資源に焦点をあてた作品や、地域の人々と一体となった体験型の作品を展開したほか、高校生や大学生との協働プロジェクトなど多様な展開に取り組んだ。

 

1.「集落」や「人」を見つめ、表れたアート作品

アーティストが地域の資源として、「人」を発見し、表現の軸に据えた作品が多くあった。芸術祭を中心に、アーティストや地域住民、来訪者のコミュニケーションが図られる要素となった地域意識の変革や、来訪者による地域発見につながっている。

 

2.2市町にまたがるエリアを対象とした芸術祭のあり方の検討

今年度より、2市町にまたがるエリアを対象とした芸術祭の、2市町の行政担当者、大井川鐵道、地元自治会やコミュニティ、静岡県による推進会議を計4回実施した。広報、来訪者管理など運営面での協議を実施した。準備や進捗状況の共有とともに、広報や来訪者管理など運営面での協議を実施した。

 

3.ボランティアサポーターの活動

芸術祭を支える地域住民によるサポートの体制やボランティアサポーター「あんまん部」は、複数年の取り組みから複数年の取り組みを通じ理解と期待の高まりが感じられる。地域住民によるアーティストの滞在支援をはじめ、作品の制作へのサポート体制はもちろん、会期中の経路やアクセス案内や、作品の説明、自然発生的に行われる来訪者へのおもてなしなど、主体的に芸術祭に関わる姿勢が生まれてきているおり、地域の活性化や再生につながる取り組みが根付いてきている。

会 期

2020年3月6日(金)〜3月22日(日)/17日間

場 所

大井川鐵道無人駅周辺(静岡県島田市・川根本町)

参加アーティスト

関口恒男、江頭誠、さとうりさ、木村健世、北川貴好、栗原亜也子、ニシダヒデミ、夏池篤、中村昌司、形狩り衆、クロダユキ、カトウマキ、常葉大学造形学部(計13組)

主 催

NPO法人クロスメディアしまだ

共 催

静岡県文化プログラム推進委員会

協 力

島田市、川根本町、大井川鐡道株式会社

助 成

福武財団「アートによる地域振興助成」、島田市文化プログラム支援事業、静岡県文化財団ふじのくに文化プログラム推進事業助成

《担当コーディネーターのふりかえり》

「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川」は、「無人」という言葉がもつネガティブさによって見過ごされがちな集落の魅力を掘り起こし、地域内外に伝えていく芸術祭であり、この「価値転換」こそが文化芸術やアートにできることなのだと再認識させてくれます。

4回目(UNMANNEDとしては3回目)となった今回は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、イベントはすべて中止とする異例の事態となりましたが、対策を万全にした上でアーティストの制作活動は予定通り行いました。まちづくりに取り組む主催者が最も大事にしている「集落の人々の営み」を、参加アーティストも各に感じ取り、表現活動の糧にしています。

住民からは「アーティストという生き方を支えることができる地域を、自分たちでつくってきたということ。これまで自分たちがやってきたことは間違っていなかったと感じることができて嬉しい」との声があり、本事業が人々の地域に対する誇りにつながっていることを感じました。

このように、芸術祭を支える人々さらには来場者が、アーティストや作品のその先に、自らの地域を見つめ直すとき、「UNMANNED」としての価値が最大限開花するのだと思います。

(立石沙織)

2018年度
UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川2019

《無人駅文庫》2018、福用駅
《無人駅文庫》2018、福用駅

当プロジェクトは、アートの視点から地域を見つめ直すことを目的とし、大井川鉄道沿線の無人駅(駅員不在の駅)を舞台に開催する芸術祭である。2017年度から静岡県文化プログラムとして開催し、今回で2回目となる。前年度の成果と課題から、下記の点において重点的に取り組み、2019年3月の開催を目指す。

①エリア拡大作家及び作品プランの充実)

開催エリアが島田市のみの8駅だった2017年度に対し、2018年度は島田市〜川根本町まで拡大する。行政の区割りを越えて開催することで、静岡県中部が「大井川」という共通項を通して一体となれる枠組みを目指す。

②二次交通の整備、イベントの充実

来場者への対応として、回遊性を考慮した二次交通の整備や、様々な団体と連携した多彩なイベントを企画し、地域全体で盛り上げていく。

③サポート体制(ボランティア)の組織化

地域住民による主体的な参加を促進するため、ボランティアを組織化して受け入れ可能な体制を整備する。

会 期

2019年3月8日(金)~24日(日)【17日間】

場 所

大井川鉄道無人駅周辺 (静岡県島田市~川根本町の1市1町)

鑑賞パスポート

1,000円(高校生以下無料)

参加アーティスト

中﨑透、江頭誠、さとうりさ、木村健世、しでかすおともだち、スガ・コーサクとクリ・エイト、夏池篤+山本直、+tic、星雅治、持塚三樹、清水陽介、長谷部勇人、クロダユキ+蔵内彩子、中村昌司、伊藤尚未(計16組)

主 催

NPO法人クロスメディアしまだ

共 催

静岡県文化プログラム推進委員会

助 成

島田市文化プログラム支援事業
損保ジャパン日本興亜「SOMPOアートファンド」(企業メセナ協議会 2021Arts Fund)

協 力

大井川鐡道株式会社、島田市、川根本町

2017年度
UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川2018

無人駅が開くと地域が開く。
それは、ルネッサンス~地域復興となる

島田慎太郎/小柳津直二《KODAMA〜こだま》2017
島田慎太郎/小柳津直二《KODAMA〜こだま》2017

「アートがきた!」と叫ぶおじいちゃんの声!目線の先は、空へ上がってゆく作品『KODAMA』。無人駅のホームに立つしわだらけの顔からは、涙が流れていました。 おじいちゃんの苗字は「小玉」さん。抜里地域に多い「こだま」という苗字を表現したこの作品は、いつのまにか「まゆ」という愛称で皆から呼ばれ、この下で宴会をやりたい、ライトアップしたらどうか、と集落中の人々に愛されていき、いつの間にか木彫りの大きな熊が置かれ、人々が集まるお茶会も開かれるようになりました。

前田直紀《Platform pottery museum》2017

アートによりそこに住み続ける人々や地形、生活文化、歴史を伝える。だから、作品やアーティストが集落に受け入れられ、世界とつながる化学反応が生まれる。地域固有の資源(魅力や課題)を、アートという手法を活用することで多様な表現で顕在化させ、地域に対する「気づき」の発見・理解、そして地域と来訪・参加者間における交流が生まれる。つまり、アートの視点から地域を見つめ直す取り組み。このことが私たちのやりたいことであり、アートにおける地域づくりの可能性だと信じています。 静岡県の人口流出数は全国ワースト4位(2016年)。日本中が喫緊の課題として人口減少をあげている中、全国市町村約1,800の内、約半分である896が2040年までに消滅の可能性があると危惧されています。 私たちは、ただでさえ減っていく人を自治体同士が取り合うよりも、内側から「その地域で生きる喜び」を湧き起こし、今現在、そこに暮らす人たちの「幸せ度」が増すような、そして地域の魅力が新たな形で外に発信されていく取り組みが地域においては必要だと考えます。

清水陽介《tunagari.つながり》2017
清水陽介《tunagari.つながり》2017

かつて、大井川鐵道は地域をつなぐ大動脈でした。産業の変化、交通網の変化という時代の流れの中、つなぐ役割は残しながらも、地域との関わりのあり方は大きく変わっていき…そして、「無人駅」という空間が生まれました。 「地域の人が減っていく」。この日本中の課題の象徴的な場所が、鉄道駅の『無人駅』だと考えます。情報化・効率化とともに無人化が進む日本の地域社会において、無人駅というフィールドが日本そのものに見えてきませんか。 それでも。 「過疎地域」といえる無人駅を入口として広がる集落には、昔からの暮らし、生活文化が今も息づき、畑仕事や隣近所の集まりを大切に豊かでいきいき暮らす人々が確かに存在します。無人の先は有人、もしくは友人…。私たちが、無くしかけてしまった、地域の『記憶』『風景』『営み』があるのです。

持塚三樹《Painting layer》2017
持塚三樹《Painting layer》2017

無人駅は入口。現代社会が置き忘れた、「異界」=wonder Landへの。 私達は、無人の場所を入口に、異界へと誘います。現代アートが「回路」を抜けるための道しるべです。 さあ、ぜひみなさんも異界の入り口をのぞいてみてください。無人駅アートルネッサンスを開催します。無人と呼ばれる駅の先の、アートで彩られた「異界」、wonder Landにぜひお越しください。

NPO法人クロスメディアしまだ(理事長:大石歩真/事務局長:兒玉絵美)