特定非営利活動法人 クリエイティブサポートレッツ
団体概要
2000 年に設立された認定 NPO 法人クリエイティブサポートレッツ(以下、「レッツ」という。)は、現在、 静岡県浜松市の中心市街地に「たけし文化センター連尺町」という拠点を構える。障害福祉施設でありながら、地域の文化創造発信拠点となることを目指し、「障害や国籍、性差、年齢などあらゆる「ちがい」 を乗り越えて、人間が本来もっている「生きる力」「自分を表現する力」を見つめていく場を提供し、全ての 人々が互いに理解し、分かち合い、共生することのできる社会づくりを行う」団体である。
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2020年度
「スタ☆タン!!Z」 「表現未満、リサーチプロジェクト」
事業内容
2016年度から始まった「表現未満、」プロジェクトはこれまでに、「ひとインれじでんす」「しえんかいぎ」タイムトラベル100時間ツアー」など数々の独創的な事業を生み出してきた。中でも障害福祉と文化事業が一体となった拠点づくりは全国に影響を与えている。2020年は、これらの事業を継続的に行っていくとともに、「表現未満、」の考え方をさらに全国、世界に伝えていく初の実践を試みた。具体的には「~雑多な音楽の祭典~スタ☆タン!!」から「スタ☆タン!!Z」プロジェクトとしてコロナ禍の中、いつでもどこでも「スタ ☆タン!!」が行えるキット(スタ☆タン!!スターター) を開発。家庭で家族と、学校で友達と、日常の様々な場所が舞台となり、身近な人と表現をまなざす機会となった。また、福島・長野・宮崎・松山・大阪といった全国のパートナー団体の手によってその地域独自の「スタ☆タン!!」が開催された。そして、スタ☆タン!!スターターは英訳版も制作。海外パートナーであるワシントン大学のジャスティン・ジェスティ氏の協力のもと海外展開を行う基盤整備をした。
また4年間にわたる「表現未満、」プロジェクトの意義や位置づけを検証するため、国内外の4人の研究者によるリサーチ事業を行った。「表現未満、」という概念が立体的に分析・検証されたことで、世界的現代アートの潮流の中にレッツの活動が位置づけられ、今後の検証事業の試金石となった。
《担当コーディネーターの振り返り》
アーツカウンシルしずおかの前身である静岡県文化プログラムの地域密着プログラムは、クリエイティブサポートレッツの「表現未満、」プロジェクトの進化と歩みを共にしている、と言っても過言ではないだろう。私たちがレッツの取り組みから日々学ぶことが多く、今や静岡の看板とも言えるほど、全国に「表現未満、」の概念は広がりを見せている。
2020年度の活動の中で、「スタ☆タン!!Z」プロジェクトは、これまでリアルな場で発表し、公募による審査員によるコンテスト形式から脱却する試みであった。健常者も障害者も関係なく、誰もが「表現」の可能性と潜在力を持っている、としながらも、そこにランクづけが入り込んでしまうことにある種のジレンマを抱えながら(しかし「これはなんだかよくわからない」という表現に出会った時の審査員の示唆に富むコメントも、観客としては大いに刺激を受けて、「そんな見方もできるんだ」と感心することも多く、またイベントの参加者にとってもランクは動機づけとして決して弊害とは一概に言えないのだが)、オンライン開催は、むしろコロナ禍を逆手に取って、多種多様な人たちが集い、自分たちなりに捉えた「表現」を好きな長さで発表し、観客も好きな時に観る、という少しずれた共時性を実現することができた。結果、その場で行われるイベントとして着地、成立させなければならない、という縛りからも解放されて、これまでのジレンマに対して一石を投じたものとなった。また従来からレッツの中で課題意識のあった「広がり」を強く意識し、挑戦したことで、レッツから手が離れ、パートナーとその周りの人たちが自由に好きなようにスタ☆タン!!に取り組むことで、物理的な距離だけでなく、コンテンツの幅としての広がりを確実に見せていた。
リサーチプロジェクトでは、これまでの膨大な活動記録を気鋭の研究者たちがそれぞれの専門分野から論じ、意味づけることで、改めて俯瞰的にレッツのアートの文脈における位置や意義が明確となった。今後の研究における発展も期待される。
海外展開の準備も整った今、「レッツのスタ☆タン!!」から「BE A☆STAR!!」へ、「静岡発世界へ」が文字通り実現しようとしている。
(佐野直哉)
2019年度
「~雑多な音楽の祭典~スタ☆タン!!」
あなたの大切にしている音の表現、音とも言い切れぬ現象、森羅万象、如何なることも対象にしたオーディションイベント
一年の沈黙を破り返り咲いてきた我らがスタ☆タン!!は新拠点たけし文化センター連尺町を舞台に第三回を行うこととなりました。
出演者だけでなく審査員も全てを公募!!
新たな船出となったスタ☆タン!!3は一体全体如何様なる混迷と光に満ち溢れることとなるのくぁっ!?
ひづるしく輝き勇む出演者と、それを受け止め苦悩し悶絶しながらも言葉にすることを諦めないであろう審査員。
そして貴方は「多様な様」に出会って何を思うのくぁっ!?
ご自身の眼で確と受け止めてみてください。
《担当コーディネーターのふりかえり》
2000年の設立から一貫してソーシャルインクルージョンを目指して活動しているクリエイティブサポートレッツは、お互いに尊重していこうとする文化活動「表現未満、プロジェクト」をブンプロと共に2016年から育ててきました。その活動は2017年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を代表の久保田翠さんが受賞するまでに注目を集め、アートが社会福祉、地域包括、社会包摂などの分野の構造を変えられることを世の中に示すまでになりました。2019年度は「表現未満、プロジェクト」の中から、「表現未満、」な音楽パフォーマンスを全国から公募形式で集めた「雑多な音楽の祭典〜スタ☆タン3〜」をブンプロではサポートしました。
通常、福祉施設への訪問者は限定的ですが、障害者施設で文化事業を行うことで、多様な他者との出会いを生み出しています。それは「知らない」ことによる差別を防ぐのみならず、訪問者に他者を通じて自己を見つめる機会や、ありのままの存在を肯定する「場づくり」を提供しています。「表現未満、」は 利用者に宿る創造性を「文化」として肯定する試みです。それは同時に訪問者自身にとっての創造性や主体性を生み出す装置にもなっているのです。
(佐野直哉)
2018年度
「表現未満、」プロジェクト
1、観光事業
「光を観る」観光プラットホーム
①観光事業
・第2回観光サミット
・記録集の制作
②タイムトラベル100時間ツアー
・障害福祉施設アルス・ノヴァ+のゔぁ公民館
・新拠点たけし文化センター連尺町にて行う
③かしだしたけし
・全国障害者芸術祭IN大分への招聘
・あいちトリエンナーレのノミネート
④観光PV事業
・映画祭コンペ等へ出品
2、ひとインれじでんす
ソーシャルインクルージョンの現場としての街のあり方
・「ひとインれじでんす」の実施
・記録集制作
3、拠点・居場所づくり
「表現未満、」が生まれる現場を中心市街地につくる
・たけし文化センターのオープン
・社会包括をテーマとしたフォーラム
4、しえんかいぎ
福祉の中の「表現未満、」
・しえんかいぎの実施
・他施設と連携してのしえんかいぎの実施
・記録集制作
・報告会の実施(フォーラム内)
2017年度
「表現未満、」プロジェクト
国家主義がはびこり、分断がますます進む社会の中で、今こそ芸術の役割を改めて意識する時代となりました。芸術は、国家、民族、人種、性差、障害などあらゆる違いに関係なく、共感、共有できる人類共通のものです。そして、芸術・文化はすべての人々が作り手にも鑑賞者にもなることができます。
認定NPO法人クリエイティブサポートレッツがすすめる「表現未満、プロジェクト」は、芸術の持つ普遍性、寛容性を、普通の市民の営みに照らし合わせ、それぞれの人たちが享受し、それぞれの違いを認め、共有する方法として捉える文化活動です。
レッツの運営する障害福祉施設アルス・ノヴァ及び、このたび、浜松市中心市街地に建設する(仮称)たけし文化センターにおいて、障害福祉という分野に、文化・芸術の思想を持ち込むことによって、障害の定義を再構築し、新たなサービス、拠点づくり、地域の有り様など、革新していきたいと考えています。