Scale Laboratory
2020年
「ながめくらしつ連続公演『…の手触り』」
事業内容
①「昨日の手触り」全2公演 映像配信のみ
日 時
2020年8月29日(土)、30日(日)
②「昨日の手触り」全2公演(8月の再演)
日 時
2020年10月17日(土)、18日(日)
③「こころの手触り」全2公演
日 時
2020年12月26日(土)、27日(日)
④「日常の手触り」全1公演
日 時
2021年2月28日(日)
会 場
沼津ラクーン8階
内 容
舞台公演、映像配信、映像作品制作
参加アーティスト
ながめくらしつ
担当コーディネーターのふりかえり
2020年が始まると同時に、感染が拡大していった新型コロナウィルス。ウィルスについて詳しく知る間もないまま、日本でも様々な「活動」に対して自粛を求められるようになった。芸術文化活動についても然り。どこまでの対策を取ることが最善策なのか多くの人が迷い探り、かつ活動を停止せざるを得ない日々を長く送ることになった。
Scale Laboratory(スケラボ )も、当初想定していた事業内容を、新型コロナウィルスに対応した内容へと変更せざるを得ない状況となった。
これまで上演をしてきた「沼津ラクーン」で、現代サーカス「ながめくらしつ」をプロデュースし、舞台公演と映像配信、映像作品制作を企画。「劇場」ではなく、現在はデパートだったことを想起させることもない、コンクリートむき出しの壁と天井と床が無機質に存在する「場」を、「ながめくらしつ」がパフォーマンスすることで有機的な「空間」へと変化させることを狙った。
「空間」に存在したのは、「からだ」と「おと」が生みだす「ものがたり」だった。
その「ものがたり」は、観る者が好き勝手に自身の世界に作る「ものがたり」である。
スケラボ はこのプロデュースを重ねながら、見えない、見えにくい方へ、スケラボ の感じた「ものがたり」を贈ることにした。
THEATRE for ALL
https://theatreforall.net/movie/nagamekurasitsu/ より
<アーティスト・制作者からのメッセージ>
目黒陽介が作り出す作品は、繊細な身体の動きと、詩的な世界観で、元々言語を必要としないノンバーバルなものです。この作品に音声ガイドを加えるとしたら、見えているものをそのまま解説するのではなく、一度誰かの心の中を通した言葉を紡ぎたいと思いました。演劇家の藤原佳奈による解釈を通して、身体表現、美術、音楽が融合したこの作品に、テキストというアートワークのレイヤーを載せる試みです。
この「沼津ラクーン」の8階には、普段人が訪れることはない。人が来ないとウィルスも招かない。
以前は商業施設としては前向きに捉えられなかった環境が、ウィルス対策には前向きに捉え直すことができた。生身の身体を存在させながら、接触はしない。移動の制限ゆえ直接会場に来られない方のために、ポストパフォーマンストークは生配信する。など、新型コロナウィルスに対応したガイドラインの遵守と、出演者・スタッフのPCR検査を行い、従来よりも一層の工夫と細心の注意を払っての上演となった。
コロナウィルスへの対策により「できなかった」ことも数多くあるだろうが、むしろ「できた」ことを糧とし、次の新たなる挑戦を続けて欲しいと願う。
(北本麻理)
2019 年度
となりのアーティストプロジェクト
〜地域を拓き、可能性の扉を開く〜
1. スケラボ アートサーカス
「空中音楽会」
沼津駅前の「沼津ラクーン」各階を会場に、赤ちゃんから大人まで楽しめるパフォーミングアーツイベントを実施。
「for Babies」「for Kids」は、小さな頃から楽しく音楽に触れてもらいたいと考える音楽家が企画し、おとぎの国のような空間で保護者も一緒に参加できる企画となった。奏者である音楽家と参加者の子どもと保護者との距離も近く、子どもの反応に奏者も保護者もコミュニケーションを取りながら、全員が一体感を持って「音」の魅力を味わう機会となった。
一変して「for Adults」は、民俗音楽をベースにしたダンスミュージックに最後は盆踊り状態になったり、電子音楽と映像で空間全体をクールな夜に演出する2nights。パフォーマンスに関わるスタイルに始めは戸惑い気味だった観客も、好奇心が刺激され最後は充実した時間に満足した様子。
経験したことのないスタイルのパフォーミングアーツ作品を、毎年発表しているScale Laboratory。沼津を始め静岡県東部地域住民の「少し足りない刺激」を提供しつつ、観客の感じたこともトークや歓談でキャッチし、アートの楽しさや魅力を「一緒に」作り上げるスタイルに、年々地域からの理解や協力が蓄積される成果をあげている。
日時
2019年12月20日(金)-22日(日)
会場
沼津ラクーン
出演
SUN DRUM、松岡大、林文彦、飯田将茂、鈴木彩、原順子、サノユカシ(映像)
来場者数
120名
2.スケラボ アートキャラバン
保育園、学童、高校などへ、アートをお届けするアウトリーチ活動。
子どもたちに広い視野を持ってもらい、ユニークな体験をしてもらいたいという保育園のリクエストに応じて、アーティストの巻上公一氏を講師に「へんてこ音楽会」を実施。巻上氏のヴォイスパフォーマンスに子どもたちも歓喜の声をあげて、踊りまくりのノリまくり。
障がい児童放課後デイサービスには「色んな人と接して欲しい」という希望から、スケラボ メンバーやゲストアーティストによる、映像、カフェ、造形などのワークショップを実施。
高校演劇部では、コンテンポラリーダンスワークショップを実施。普段から演技レッスンを重ねている生徒たちも、身体全体を使った表現にのびのびと参加することができ、終始和やかで活発なワークとなった。
アウトリーチへの要望は様々であるが、スケラボ のネットワークとスキルを活かしてワークを実施することができ、また受け入れ先の満足度も高いものとなっている。
地域の方々との連携を密にしたアウトリーチ活動は、アートによる人づくり、地域づくりの良いモデルとなっていると同時に、スケラボ の新たな看板メニューともなってきている。
会場
ぽんぽん保育園、エシカファーム、
静岡県立静岡城北高校演劇部、静岡県立伊東高校演劇部 など
講師
磯村拓也、AKICHIコーヒー、中村一平、長井江里奈、巻上公一
参加者数
141名
《担当コーディネーターの振り返り》
ブンプロのスタートとほぼ同時に、活動を開始した「Scale Laboratory(スケラボ )」。共に歩んできたコーディネーターとして、この機会にスケラボ のこれまでの活動を振り返ってみたいと思う。
ブンプロの軸となるテーマ「地域(社会)課題との対応」とは、少々上滑り気味に見られていたスケラボ のプロジェクト。沼津市、三島市を中心とした静岡県東部での活動を続けて行く中で、見事に「課題」に対応したプログラムを運営する団体へと変わっていった。
実は課題であったのは、「アートが足りない」地域であったことであり、「足りない」ことを顕在化させたのが、スケラボ の活動による成果である。この逆順的な課題との関わり合いは、アートが持つ力として期待されている「可能性」や「効果」を、活動を続けることで示してこれたと考えている。
アートは課題を直接解決する術ではない。課題を顕在化させ、その課題に向き合い、思考を重ねるきっかけ作りとして、アートが有効な手段の一つだと考えている。スケラボ は手法として「対話と演出」を取り入れ、巡り巡って地域の方々と課題に向き合うスタイルを築き上げた。
このスタイルに共感した方々が、スケラボ のスタッフとして加わったり、運営のサポーターとなったり、プロジェクトを依頼したりと、共感の波紋が広がっている。スケラボ の活動を通して、身近にアートを体験できる環境となった東部地域では、「足りない」から「魅力ある」へと変化し、心が満たされた人が増えてきていると聞いている。
今後も、逆順的にアートの可能性を追求して行くだろうスケラボ の活動に、注目していただきたいと思う。
(北本 麻理)
2018年度
伊豆半島アートキャンプ
Scale Laboratoryは、2016年より沼津・三島・熱海などの遊休地で、パフォーミングアーツを中心としたバラエティ豊かな公演活動及び作品制作と、アートと地域に関わる公開会議「妄想会議」を実施してきました。
「伊豆半島アートキャンプ」は、我々の活動を総称するプロジェクト名です。伊豆半島の様々な場所で、いくつもの“芸術を楽しむ場所(プラットホーム)“を開拓し、「対話と演出」を基本方針として、感性豊かな地域社会の形成を目指します。
■遊休地を利用した公演活動「スケラボアートキャンプ 」
全国的に問題視されている空き家。その中でも「用途がなく使われていない」施設は静岡県内においても例外なく増加している。そういった施設・場所に「一人でも多くの人が、生活の一部として無理なく芸術を楽しめる活動の場」を仮設し、空き家(=遊休地)そのものに価値を見出しつつ、芸術文化に触れる機会を増やす。
■コーディネート・ネットワークづくり「妄想相談所」
伊豆地域には、県立・政令指定都市立レベルの地域を牽引するような芸術団体・施設が県内中西部に比べ少ない現状がある。この地域で芸術発表を実現したい方々と定期的に対話の機会を設け、企画立ち上げの支援をしつつ、相互ネットワークを構築していく。
■アウトリーチ活動「スケラボアートキャラバン」
2018年度の新規計画で、2017・18年度のプログラムで制作した新作のパフォーミングアーツ作品を、学校や福祉施設、保育園・幼稚園などへ運び、上演とワークショップを行い、芸術への関心をさらに深めてもらう。
2017年度
伊豆半島アートキャンプ
〜暮らしと芸術をつなげ人や場所の潜在能力を開拓する
Scale Laboratory(スケラボ)は、伊豆を拠点に「ひとりでも多くの人が、生活と地続きに無理なく芸術を楽しめるローカル」を目指し、役目を終えた施設や、使われていない場所などに一時的に活動の場(=舞台)を作り上げ、様々な芸術に関わる企画を行っています。 「衣食住芸(生活とともにあるアート)」 「移動(開催場所の開拓)」 「越境(ジャンルの横断、掛け合わせ)」 「継続(定期開催と発展)」をテーマに、伊豆半島を南下しながら、宿営地のようにいくつもの“芸術を楽しむ場(舞台=プラットホーム)”を拓き、育て、鑑賞者をはじめ、プレイヤーや裏方など、芸術に関わる人材と芸術鑑賞の機会を増やしていくことを目的に活動をしています。
静岡県の中で最も首都圏に近い伊豆地方は、プロとして作家活動やをしている人や小さな芸術グループは数多くありますが、それらを牽引し、中心的な役割を果たすホールや美術館、団体が存在せず、それぞれの活動を知ることや、地域やジャンルを超えて協力し合うことが充分できているとは言えません。 また、静岡県中部・西部地区に比べ、マスコミや出版、映像制作などの創造産業の需要が少なく、そのような技能を持つ人材を地域が抱えきれないという問題もあります。 中心メンバーのほとんどが創造産業に関わるプロフェッショナルであるスケラボは、活動を通じ、伊豆地域を高レベルなクリエイティブ人材の“地産地消”地域にしていきたいと考えています。 この活動は、自分たちがこの素晴らしい伊豆に住み続けるための居場所づくりでもあるし、より多くのプロ、プロの卵たちに伊豆に来て欲しい、居続けて欲しいという種まきでもあります。 一番大切なアートの中身やスキルを地域外に頼っていては、「ひとりでも多くの人が、生活と地続きに無理なく芸術を楽しめるローカル」は実現しないと考えるからです。 今年度は3月まで毎月、「アートキャンプ」と題した複合型のアートイベントを沼津で開催します。 コンテンポラリーダンスの公演や、若手研究者による美術の話、ダンサーをモデルにしたクロッキー会や撮影会など、毎回違ったゲストをお迎えし、美味しいものを食べたり飲んだりしながら、肩肘張らず、誰でも気軽に芸術鑑賞を楽しむ空間を作り上げます。 また、「妄想会議」と題して、地域の抱える問題や、やりたいことがあるけれどやり方が分からないという方々の話をみんなで聞くイベントも行っています。妄想会議で出てきたアイディアや出会った人が、次のスケラボの企画のタネやになっていきます。
主宰の川上大二郎の本業は、舞台監督です。 照明、音響、美術、衣装……毎回、一から「舞台」を作り上げるのは、それはもう大変ですが、五感で芸術を楽しむのに「空間」の力は非常に重要です。 私たちは、空間に新しい力を与えることができます。数時間前まで何もなかった場所が、たくさんの人が笑顔になる風景に変わる様を見せることができます。 どうぞ、ご期待ください。