アートロ=Toro Lab. Innovation Project

提案者

登呂会議【静岡市】

概 要

弥生時代の遺跡である登呂遺跡を拠点として、人々が「土から作る・食べる・生きる→土に還る」という循環を体験することで、古代の暮らしの復元ではなく、「現代の暮らしを見直すきっかけ」=「土さえあれば生きていける」という視点を得て、地域を豊かにつなぐ当事者になるとともに、「土」から始まる体験をベースに新たな学びの場(研究ラボ)を生み出すことを目指す。

これまでのこと。

2011年、震災後の1ヶ月めと4ヶ月めに仙台市の隣に位置する多賀城市へ足を運んだ。瓦礫の山は、この先100年分の埋め立てゴミの量だという。私たちは便利のためにいろんなものを作ってきたけれど、『土さえあれば生きていけるのではないか?』と気づいた。
2012年、登呂遺跡で田んぼの土から土器を作り、同じ田んぼで稲を育て、収穫した米を土器で食べる実験を始めた。

「地球上の土は焼けば、みんな焼き物になる」とアタマでわかっていたけれど、やってみたら、できた!弥生時代に使われていた台付き甕型式土器を模して作ると、粘土に砂を入れて熱伝導率を高くしてあるし、口縁の形で火を焚いても煤が中に入らないようにデザインされている。先人はすごいと実感した。

2013~15年「土がぼくらにくれたもの」という講座を行い、稲と土をめぐる半年を70名ほどの参加者が体験した。3年めには田んぼで、水位をめぐったいさかいが発生。「強力なリーダーが必要だ」『役割分担、伝達は…』と言う声があがり、わたしたちは2000年の時を超えて、社会の始まりを目撃した。

おんなじ人間だ。(生まれた時はおんなじ赤ちゃん!)
すべてを失っても、生きていける自信が身に付くんじゃないか?と始めた活動は、分業化した今の暮らしを見直すことに繋がった。

これからのこと。
人間が作った最たる道具「住居」を市民の手で作ります。

2015年から「自給自足は道具から」をテーマに、足元にある素材[竹][杉][藁][漆][鹿][土][稲]から道具をつくる実験研究を始めている。米を巡る半年を基盤に、冬の仕事、雨の日の仕事と、創造の幅を広げて、2020年には、米食う人々の暮らしの成り立ちを、一年通してぐるりと体験できるようにしたい。

考古学者の目から見た登呂遺跡、建築家の視点で眺める弥生時代の暮らし、木工、繊維、様々なプロが登呂に訪れて、暮らしの実験ラボになる。

力がある人、片付ける人、子守をする人、ご飯を作る人、そういうプロセスすべてを含めて、みんなでつくるのが、住まい。足元にある素材で、修繕もできる住居を作ることが目的だが、身体を使い、力を合わせて創り出すことで「ここに生まれてよかった」「人間て、いいじゃん。」と、希望や自信が持てるんじゃないか?と思う。

本業は、人間。「土から作る・食べる・生きる→土に還る」という循環を体験することで、私たち自身もまた自然界の“命のぐるり”の一員であると実感できるプログラムを提供していきたい。