富士の山ビエンナーレ実行委員会
団体概要
富士市、富士宮市、静岡市の地元有志により立ち上がった「富士の山ビエンナーレ」。
他地域でのアートロプロジェクトによる成果や効果に触発され、富士市を中心とした地域に、芸術を取り入れた創造産業振興や人材育成を目的としたビエンナーレを実施。地域資源の再開発と他地域とのネットワーキングを企て、富士地域から新しい価値を掘り出し、発信することを狙う。
SNS
2020年度
するがのくにの芸術祭 富士の山ビエンナーレ2020
事業内容
日 時
2020年10月24日(土)~11月23日(祝)の土日祝日のみ
会 場
富士本町、富士川、蒲原、富士宮など各エリア計13ヶ所
参加アーティスト
赤堀里夏、荒木由香里、飯田竜太、市川平、いらはら みつみ、大洲大作、大野公士、大輪龍志、かうぉa.k.a.すしじょじょ、小曽川瑠那、衣真一郎、ジェームズ・ジャック、ジェボーン・チャンドラ、清水玲、中島崇、羽山まり子、ホガリー、松蔭浩之、水谷一、吉野祥太郎
《担当コーディネーターのふりかえり》
4回目となる「富士の山ビエンナーレ」。これまでの実績をより深化し、新たな取組も試みようと準備を進めてきた。しかしながら、「富士の山ビエンナーレ」も例に漏れず新型コロナウィルスに翻弄させられてきた。
今回は、ディレクターに木内雅貴氏、キュレーターには原田雄・森健太郎の両氏が選任され、芸術祭のディレクションと作家/作品と展示会場とのマッチングを連携して行うようチーム体制を作った。
特に地域を舞台にして行う芸術祭は、美術作品の発表会という要素よりも、美術作家が地域に滞在し、展示会場はもとより地域の特色、事情、課題、魅力を、独特の視点とコミュニケーション能力によってあぶり出し、「作品」に転化されたモノ・コトを紹介し、地域住民の共感を図るというものが多い。
「富士の山ビエンナーレ」においてもその意図は通底しているが、今回のチーム体制により、アウトプットに変化が見られただろうか。
「富士の山ビエンナーレ2020」で特に印象に残っているのは、新たな開催エリアとなった富士宮市「長屋門」での大野公士氏の作品と、富士川エリア「三角地」吉野祥太郎氏であった。
大野氏は、歴史的建造物の小さな部屋に緻密に糸を張り巡らせ、その糸の網に触れないよう、直方体の何かを設置していた。何とも緊張感が漂う作品である。その緊張感の中、制作中に少しお邪魔した時は私自身がものすごく緊張した。少しでも気をぬくと、全て失ってしまうそんな緊張感。と同時に、なぜここまで緻密に(息をするのを躊躇うくらい)作品を作るのか。未だに解は得られていないが、「息もできない緊張感」と「古い建物の危い存在感」が強い印象をもたらしたのだと思う。
また、吉野氏は前年度に富士市で滞在制作を行っており、富士川の上流まで行ってみたり、どこかで誰かと酒を飲み交わしたり、誰かの秘密を聞き出したり、狙いは正直よくわからないが富士界隈をくまなく駆け巡っていたようである。
その結果、山側からと海側からの道が三叉路となる地面を持ち上げた。そこでなぜ地面を持ち上げる必要があったのか、知りたい考えたい感じたい、という好奇心と感情の交錯が記憶として体内に残った。
こんな風にして見る人たちみんな、好奇心や感情を好き好きに巡らせることができる芸術祭が身近に存在し、身近なところで活動するアーティストと出会いながら、作品に愛着を持ってもらえるまちづくりもいいなと思う。
新型コロナウィルスでの気づきはとしては、キュレーターもアーティストも首都圏在住者が多く、たびたび移動の制限に翻弄させられた。そもそもアーティストがいない(活動の場がない)と考える首都圏以外の地域は多く、コロナウィルスによってその課題がより顕在化したことになった。コロナウィルスが収束し、これまでのような通常の生活が戻ったとしても、地域で活動できるアーティストを創り出して行くことを、あらためて想定してほしい。
(北本麻理)
2019 年度
Fujinoyama ART HUB
レジデンス事業 Fujinoyama Art Hub 実施
富士本町商店街にあるイケダビルを利用して行われるマイクロレジデンスプログラムで。2019年は3名のアーティストが富士本町商店街を舞台にアート活動を行なった。
アニメーションを使った作品を発表するKawo a.k.a Suhijojo氏は、イケダビルの3階で作品を発表。滞在中は、富士本町商店街を中心に富士市民へのリサーチやワークショップを行い、参加者の詩作が作品でも用いられた。
インスタレーションを発表した吉野祥太郎氏は、富士市の地形や自然にも関心を示し、市街地以外でもリサーチを展開。作品はイケダビルの一室に、富士山のシルエットが浮かびあがる幻想的な空間を作り上げた。
音を用いた作品を発表している西原尚氏は、共同プロジェクトとして市民参加のパフォーマンスを発表。数回のレクチャーと行い、現代音楽の歴史や手法を学ぶ機会を設けた。パレードでは各参加者の背負ったスピーカーから、音の重なりと響きが商店街を往来する非日常の空間を作り上げた。
会場
イケダビル
滞在アーティスト
吉野祥太郎、Kawo a.k.a Suhijojo、西原尚
参加者数
377名
《担当コーディネーターのふりかえり》
隔年で「富士の山ビエンナーレ」を実施している富士の山ビエンナーレ実行委員会は、地域で繰り広げる現代美術の芸術祭の振興と、芸術への理解促進、地域住民との交流を目的に「Fujinoyama ART HUB」を2019年度に実施した。
公募で選ばれたレジデントアーティストは、富士市を中心に滞在しながらリサーチと作品制作と作品の発表を行った。
アニメーション、造形美術、音楽と、アーツジャンルは多岐に渡り、制作スタイルも各作家の個性が垣間見れる方法で行われた。
どの作品にも地域住民のアイデアや感性が取り込まれ、生き生きとした富士エリアの営みが、作品を通して伝わってくるように感じ取ることができた。
レジデンスとなった富士駅前の「イケダビル」は、商店街の中にあるビルで現在は空き店舗となっている。作品制作と発表を行うアーティストが商店街や地域の活性化の媒介となることを願い、実行委員会が試行錯誤のもと手作り感覚で実施されたレジデンス事業。
作家とのコミュニケーションや地域でのネットワーキングなど、これからの運営に向け取り組むべき課題はまだまだ残されているが、「地域で作り上げる芸術祭」への再構築にむけ、新たな第一歩を踏み出すこととなった。
(北本 麻理)
2018年度
富士の山ビエンナーレ2018 スルガノミライ
静岡市や富士市、富士宮市の市民たちによって2014年に第1回目が開かれた富士の山ビエンナーレ。3回目を迎える今年は、10月27日から11月25日まで、富士本町・富士川・蒲原・由比の4つのエリアで開かれます。テーマは、「スルガノミライ」。富士山と駿河湾から自然の恵みを受けてきたこの地は、これからどのようになってゆくのでしょうか。十年後、百年後、千年後の世界は、きっと私たちの想像超えたものになっているでしょう。
海岸線や稜線は今のままか、動物は野山を駆けているか、川は流れているか、大地は緑で覆われているか、海には魚が跳ねているか、人が住んでいるか。15名のアーティストたちは、来たるべき世界に思いを馳せながら、作品を展示します。ミライを考えることは、今を考えること。このマップを手に取り、エリアを巡り、作品に出会い、風に吹かれながら、この地のミライに想いを巡らせてみてください。
2017年度
富士の山ビエンナーレ
芸術においては素人の市民が実行委員会を自発的に立上げ、文化祭ではない本格的な現代アートの芸術祭を目指し、富士川両岸を跨ぐ富士市・富士宮市・静岡市を中心としたエリアに第1回『するがのくにの芸術祭 富士の山ビエンナーレ』を2014年秋に展開しました。 第2回目の2016年は同エリアで現代アート作家19名、市民と実行委員会が企画した地域プロジェクトを富士市昭和木造倉庫にプロジェクションマッピング「不死(富士)」、また富士宮市倭文神社において駿河シャクジ能を開催いたしました。 また展示会場の選定にもこだわって、旧東海道沿線にある国の登録有形文化財3棟をはじめ町家や空き店舗、倉庫、寺院、空き地など地域の風情を感じられる場所を選んでいます。 開催エリアは東海道本線、新幹線、高速道路と主要幹線が通っており首都圏からは大変近い距離にありますが、ほとんどの方が足早に通過しています。嘗ては旅人が歩いて宿場を往来していた土地の文化や歴史に現代アートを融合して魅力ある演出に心がけ、市民や来場者と作家が直接交流することの大切さを私達は強く感じました。 今までにも地域プロジェクトで由比の港を舞台にした漁火マルシェ、蒲原宿場町の街歩き、鷹岡の歴史的建造物や潤井川渓谷の散策など、地域の方々に企画運営を実践提案しております。 唯一富士川エリアで青果店をリノベーションして1ヶ月間だけ交流の場を設けましたが、翌2015年フジノヤマカフェとして常設オープンいたしました。 現代アート作品は会期終了後撤去されますが、名称もそのまま私たち活動の足跡が残っておりますので是非一度お近くにお越しの際はお立ち寄りください。 2017年は来年度の芸術祭に向けて、参加予定の作家5名に作品制作の地域情報収集と市民に向けたワークショップの開催、地元で活動されている作家対象に芸術祭への呼びかけと並行して若手作家の育成講座を11月から翌年2月に行います。 また地形と産業特性と人々の生りあいを掘り下げたまち歩きプログラムの策定を市民と共に進めます。 今後地域が直面している社会状況を共有し、本事業に関わっていただいた方々の力を借りながら、芸術祭はどのような場づくりができるのか可能性を探り、長期的には参加アーティスト、市民、地元企業が交流するプラットフォームとして定着することを期待しております。 何事も始めることは大変ですが、勇気を持って池に石を投げ入れたことでどんな波紋が広がるのか、そこから生まれる「何か」が次代を担う子供たちにも伝えていければ幸いです。