初回のキックオフを経て、全4回で組まれたアートプロジェクトの勉強会。最終回のテーマは「継続していくために重要なこと」~会計と決算~でした。
ゲストとして、富士の山ビエンナーレ実行委員長の谷津倉龍三さんと、公益財団法人静岡県文化財団の齋藤緑さんをお招きし、助成を受ける側と出す側それぞれにお話をしていただきました。
「富士の山ビエンナーレ」は、静岡県文化プログラム「提案プログラム」として、2018年10月27日から約1ヶ月、富士本町・富士川・蒲原・由比の4つのエリアで開催された芸術祭です。
他の芸術祭を見て、その開催地で起きている住民のみなさんの変化を目の当たりにし、感動したという谷津倉さん。平成の大合併により分割・分立・合体・編入された、自身にとって新しい「街」が、芸術祭開催によりどう変化するのかを見てみたいと思い、実行委員会を立ち上げたのだそう。
今回で3回目となったこの芸術祭の目的(①世界に羽ばたく若き芸術家に活躍の場を提供、②地域に眠る文化や歴史とアートの融合、③地域市民・アーティスト・県外鑑賞者の交流)や、企画運営に関するプロセスや課題、そして成果など、谷津倉さんらしい人情あふれるエピソードも交えながらお話くださいました。
行政の区割りを超えて実施することの難しさや、財源の安定的な確保と補助金・助成金ならではの資金繰りの大変さに触れながらも、着実に回を重ねてきたからこそ生まれてきている成果として、全国からの視察の増加やサポーター活動の活発化があげられました。
一方、齋藤さんからは、公益財団法人静岡県文化財団が2012年から実施している助成制度「ふじのくに文化プログラム推進事業補助金」についてご紹介いただきました。
この制度は、2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に各地で実施される文化プログラムの一環として行われる文化事業を支援、促進することをねらいとし、「事業補助」と「団体補助」の2つの部門で公募しています。
とりわけ他の助成制度にはあまりないと思われる特徴は、複数年度の助成を見すえた「団体補助」。団体の足腰を強くすることを目的とし、団体の自立やステップアップに向けた活動に複数年での助成を行っているのだそうです。
2月16日(土)には、グランシップで説明会を実施するとのこと。助成制度は個別に異なる条件があるので、こうして直接質問できる機会は貴重です。ご興味のある方は、静岡県文化財団の公式サイトでご確認くださいね!
後半はコーディネーターも混ざり、会場からの質疑の時間を多く設けました。全体的に助成金・補助金の申請者側と採択側の視点の違いがまとめて聞けたのが面白かったです。
例えば、申請側が予算書を書く上での必要な視点として、助成対象となる項目を、自分たちの支出項目にどう読みかえることができるか?という発想は、「ない予算をどう作るか」という悩みに対応する重要な視点だと思いました。
また、採択側からは、事業報告書・決算書には、その事業実施を通して得られた気づきを反映して欲しいという要望が上がり、これは「なぜこの助成制度を設けているのか?」という根本的なところに対し、申請者が立ち止まって考える機会をつくる大事な指摘だと思いました。
他にも会場からは、助成制度によく見られる「総事業費の●%以内で助成する」という必ず自己負担金が必要となるルールをどう対処しているか、自己収入となる「入場料」などをどう規定していったら良いかなど、時間ギリギリまで質問があがりました。
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静岡県文化プログラムとしては今年度初の試みだったSHIZUOKA Study。
アートプロジェクトを実行していく中で多くの人が突き当たる悩みを共有し、一つでも二つでも解決していけるような「視点」、悩んだ時に相談できる同士やコーディネーターの存在を知ってもらう機会になったかと思います。
ご参加くださった皆さん、ありがとうございました!