2017-07-15七 Lab.(ナナラボ)オープニング記念トークイベント
七 Lab.(ナナラボ)オープニング記念トークイベント

静岡県文化プログラムの拠点「七 Lab.(ナナラボ)」オープニング記念トークイベントは、暑い中、沢山のお客様にご来場いただきました。

トークのテーマは「地域とアートが共鳴して描く静岡の未来」。まずは昨年度モデルプログラム実施団体の浜松市根洗学園の松本知子さん、登呂会議の本原令子さん、富士の山ビエンナーレの谷津倉龍三さんから、現場からの実践報告として、それぞれの活動と感じたことを語っていただきました。それぞれの団体の活動詳細は、静岡県文化プログラム報告書 2015-2016をご覧ください。

個人的な思いが形になり、人が出会って公共になる

ゲストスピーカーでプロジェクトコーディネーターの若林朋子さんはアートマネジメントに造詣が深く、全国のさまざまな文化プログラムをご覧になっている中でも、「ここまでバラエティーに富んだ内容のプロジェクトが集まるのは珍しい。一般的なアートのイメージを見事に覆して展開している。この豊かさはどこから来ているのか。静岡の何がそうさせているのか。」とコメントされました。つづいて名古屋の港まちづくり協議会の古橋敬一さんは、地域活性化やまちづくりの視点から「すごい、と感動する。静岡でも人口流出が始まっているが、優秀な学生が、自分の仕事がないから、という理由で静岡を離れる。しかし自分の仕事がないから、と思う自分自身に危機感を持たないといけないのではないか。仕事はある。自分の仕事じゃないことを自分ごとにしながらどんどん発想展開をして、自分自身が変わっていって自分の仕事にできる。極めて個人的なところから始まった活動なのに深めていくと、いろんな人が出会って公共になる。私たち自身が変わらないと街は変わらない。」とコメントされました。

プロセスが当初の目的を追い越す

3つのプログラムに共通していたのは、熱を持った個人が活動をスタートし、アーティストを含む多様な人たちを巻き込み、巻き込まれていったこと。そしてそのプロセスの中で出てきたさまざまな感じ方、考え方を包み込みながら、そこで生まれてくる発想を大切に、次の発展に生かしていったこと。登呂会議の本原さんが語った「当初の目的をプロセスが追い越してしまった」という言葉がそれをよく象徴していました。

異物が異物で居つづけると異物でなくなる

アートを協働することに関して、浜松市根洗学園の松本さんは、アーティストが療育の現場に入ってきたことで起こった際の変化を「音楽家とアーティストに現場に入ってもらったら、職員は彼らを異物として見ていた。しかしその異物が異物でいつづけると異物でなくなる感覚。そこから福祉に出会うことのない人たちが福祉に出会うきっかけとなった。一番柔軟に対応するのが子供たち。私たちの領域に入ってきた、と反応したのが職員。子供たちはフレームに入れられない柔軟性がある。私たち自身もいろんな角度で見たりできるような感覚をもっていないといけない。アーティストがそれを見せてくれる。」と語りました。若林さんからは「みんなをざわつかせて考えようというのがアート。 新しい回路を作ろう、いい問いを作ろうとしている。」とのコメントがありました。

クリエイティブな感性に力を借りながら生活に気づきの種を見つける

富士の山ビエンナーレの谷津倉さんからは、地域活性化、特に最近増えている空き家活用について、「アートという力を借りるとみんなが見に来てくれる。生活の中に溶け込んでいる、と気づかされる。建物って人が入らないと意味がない。」それに対して古橋さんは「 空き家だと更地にして駐車場にしてしまえばいい、と普通なるがアートだと違うアプローチになる」、「次の世代に残していく残し方を考えなければならない。文化保護指定のような人が入れない残し方をすると活きない。ちゃんと使うことで、次世代に渡したかったことがわかる。現代ではどういう意味をなすのかを読み解きながら、考えるプロセスがコミュニケーション。問題意識が出てくることが大事」と語りました。

七 Lab.(ナナラボ)オープニング記念トークイベント

熱い思いが溢れるスピーカーの皆さんのお話を聞いていると、90分はあっという間に過ぎていきました。 最後にプログラムの「評価」について若林さんは「目標を掲げて、レールを引いて、離れないように、離れたら軌道修正するのが評価のロジック。しかし日々の営みの大事さを気づかせてくれる、教えてくれるのが静岡の文化プログラムである。評価のロジックに抗って、世の中の評価の有り様を自分たちに引きつけて、世の中に問いかけてほしい。」とアドバイスを頂き、イベントは大盛況のうちに終了いたしました。

静岡らしさとは一体何なのか?それは今年採択されるプロジェクトが2020年に向けて活動が徐々に進化し、静岡のさまざまな人々と関わってゆく中で明らかになっていくことでしょう。

懇親会では、昨年度モデルプログラム採択団体である旧川根町笹間地区で山村文化をテーマとした地域振興に取り組んでいる企業組合くればの「縁會」より、現代的なオリジナル祝膳でおもてなしをいたしました。作り手のお母さんたちによる料理の説明や、自分の好きな陶器作品でいただく飲み物はスペシャル感満載!本当に特別な機会となりました。

佐野 直哉 コーディネーター
オルガン奏者として英国留学後、ビクターエンタテインメント、駐日英国大使館やブリティッシュ・カウンシル勤務を通じて、クリエイティブ産業振興、ロンドンオリンピックやイングランドラグビーW杯など国家ブランディング関連の広報文化キャンペーンを担当。東京藝術大学大学院博士後期課程在学中、青山学院大学・上野学園大学非常勤講師。
このコーディネーターの他ブログ