文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。
いっぷく
vol.5 専門スタッフ自己紹介
櫛野展正
(アーツカウンシルしずおか チーフプログラム・ディレクター)
はじめまして。チーフプログラム・ディレクターの櫛野展正(くしの・のぶまさ)です。
生まれも育ちも広島ですが、昨年末に静岡へ移住してまいりました。
他のプログラム・ディレクターやコーディネーターの皆さんのように、恥ずかしながらアートを専門的に学んできたわけではありません。
大学で障害児教育を学び、卒業後は広島にある知的な障害のある人たちの福祉施設で、介護福祉士として16年間働いてきました。
勤め始めてすぐ、施設で暮らす障害のある人たちが受動的な生活をしていることに気づき、障害のある人たちの自己表出の機会としてアート活動を取り入れ、国内外で発信してきました。
やがて施設で暮らす障害のある人たちは、従来の福祉の枠を超えて活躍するようになり、そうした活動が評価を受け、2012年からは広島県福山市鞆の浦に日本で3番目となるアール・ブリュットに特化した美術館「鞆の津ミュージアム」を開館することができました。
そこでは、障害のある人だけではなく、地域在住で芸術活動を行っている名もなき市井の人たちの表現を紹介することに尽力してきました。
美術館での経験を経て、障害のある人たちや地域在住の人たちの経済的自立を目指すため、2016年より「クシノテラス」として独立開業しました。
障害のある人たちを始め、高齢者や日雇い労働者、そして路上生活者など、20年以上に渡って地域のなかで「社会的弱者」と呼ばれる人たちの傍に寄り添い、彼ら彼女たちとともに人生を歩んできました。
まさに世の中は、障害のある人やLGBTQの人、外国人労働者など多様な境遇の人たちが共存するハイブリットな時代を迎え、そうした人たちはそれぞれに別々の価値観を主張しています。
異なる価値観との接触が当たり前にある時代だからこそ、それを認め合える文化をつくる必要があるのです。
多くの人にとって、「アート」はそれほど重要なものだと認識されていないかも知れません。
しかし、アートの役割とは、既存の価値観を揺さぶったり、変えたりすることにあります。
その橋渡しをするのが、アーツカウンシルの役割です。
既に静岡県では、各地域でさまざまな人たちが独自の文化をつくりだしています。
文化は行為と言葉でできています。そうした人たちが巻き起こす実践の重要性を、芸術文化に関心のない人たちにもこうして言葉で伝えていくお手伝いをしていきたいと考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
追伸:静岡県内の高齢者の人たちの表現に注目しています。情報があれば、ぜひお寄せください。
https://bijutsutecho.com/magazine/series/s6/23996