COLUMN

いっぷく

文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。

vol.62

成果報告会の“報告” その4/暮らしの中にある表現

(チーフプログラム・ディレクター 櫛野展正)

去る2月に開催された「文化芸術による地域振興プログラム」成果報告会の中で、実施団体が5グループに分かれ、テーマに沿って語り合ったグループワークの内容と考察を、各グループの担当プログラム・ディレクター、プログラム・コーディネーターがそれぞれレポートにまとめました。 本コラムvol.59~63では、『成果報告会の“報告”その1~5』 として、各レポートを公開しています。

2023年度「文化芸術による地域振興プログラム」成果報告会
日 時:2024年2月12日(月・祝) 13時~17時
会 場:【BiViキャン】静岡産業大学 藤枝駅前キャンパス × 藤枝市産学官連携推進センター
参加者:2023年度「文化芸術による地域振興プログラム」実施団体、一般参加者など

暮らしの中にある表現

生活そのものを豊かにする術としての「芸術」の価値に注目し、アートプロジェクトを展開している人たちを集め、暮らしの中から生まれる表現について話し合った。

沼津の任意団体「きてんきち」は、沼津市内の代表的なアートスポットに加え、団体が独自にセレクトした計25箇所ものアートスポットを­取材し、それらを地図上に集約させた「まちなかアートMAP」を作成。

マップ制作によって異なる点同士を繋ぎ合わせたことで、取材店舗や地域の人たちから「こんな場所があったなんて知らなかった」などの声が届いたという。

そのマップを元に開催した街歩きツアーでは、沼津市内に点在する­ブロンズ彫刻群の情報が参加者によって補完されたり、街歩き中に「この地面の模様もアートに見えてくる」という声も聞こえてきたりするなど参加者の創造性を触発する契機になっていたとのことだった。

松崎町中心部を花々で彩る「松崎まちかど花飾り」の実行委員会からは、こうした取り組みをどのように周知していくかという広報面での課題が共有された。

美術館壁面を彩ったプロジェクションマッピングを見てもらうために、直接一人ひとりに声掛けをして、その魅力を伝えていくという­、一見するとアナログ的手法が最も有効であったことや興味を持ってもらう人を広げるために行なった小学校への実践などが紹介された。

26軒程度の集落の人たちに向け、アーティストによる計4回のワークショップを開催した室野地農工商組合mA-FaBからは、生活の場に寄り添った場所での開催が功を奏し、自分の悩みを打ち明ける住民もいるなど、事業名にも冠していた通り、まさに本事業が「あたらしい寄り合い」になっていた様子が報告された。 

アトリエ訪問だったり学校へのアウトリーチだったり、集落の中だったりと、開催時期や場所こそ違えど、共通しているのは、人々の生活に近い場で”コト”を起こしていくことの大切さだった。

そもそも、私たちの暮らしは日々繰り返されている日常の連続であり、それが変わらない様は心の安定に繋がるが、同時に窮屈さを感じる側面もある。

そして、通常は普遍的と思われている日常に揺らぎを与え、当たり前だと思っていた日常に潜む別の側面に気づかせてくれるのが、こうしたアートプロジェクトの役割なのだろう。

加えて、美術館やギャラリーのようなホワイトキューブではない場所で展開される、こうしたアートプロジェクトには、多くの人を偶発的に巻き込んでしまう力を秘めているのである。

暮らしの中にある表現
(話合い団体)
きてんきち
松崎まちかど花飾り実行委員会
室野地農工商組合 mA-FaB

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