COLUMN

いっぷく

文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。

vol.26

「不要」から生まれる、新しい「価値」

(プログラム・コーディネーター 立石沙織)

「これは何に使われるパーツですか?」

「めちゃくちゃかっこいいっすね!」

断続的に金属音のする工場の中で、熱のこもった感嘆の声があがる。

浜松いわた信用金庫が浜松市の中心市街地で運営している拠点「Co Start-up Space & Community FUSE」を中心に、FUSEコラボレーション1.0 〜様々な出会いが新しい価値を創造する〜が走り始めた。

このプログラムは、ものづくりの街・浜松を牽引してきた製造業と、FUSEに集まるデザイナー・建築家などのクリエイター、スタートアップのIT業といった異業界の人々が融合する新しいコミュニティ創出を目指した事業だ。

製造業で生まれる廃材を素材に、FUSEに置く新しい什器をつくることで、コミュニケーションのきっかけをつくろうとしている。

11月半ば、まずは下調べとして、企業の工場をめぐりながら素材を探すツアーを行った。

協力してくれたのはいずれも製造業で県西部の代表的な企業だ。製造業のみなさんは半信半疑ながら、工場の中を丁寧に案内してくださった。大きな機械を用い、一つ間違えれば大怪我につながるような緊張感ある空間のなかで、一つ一つの製品に向き合う姿勢がとても格好いい。

その製造過程で排出される端材や材料を包んでいた梱包材など、その場ではもう不要となって産廃やリサイクル回収を待っていたモノが、今回の素材(お宝)となる。

什器づくりをリードするクリエイティブチーム「デッドストック工務店」は、「ゴミも磨けば光る」を合言葉に、産業廃棄物やありもので空間をつくる建築ユニットだ。全国各地の工務店や職人、デザイナーやアーティストにより、不定期にて構成されるのだが、今回は浜松を拠点に活動するデザイナーや建築家が中心となる。

彼らは、廃材の中にある造形美や、素材そのものが持つ輝きを見出して、それらが生まれ変わるイメージを描く。見方を変えるだけで、それまでなかった新しい価値が宿る(かもしれない)。その未知の可能性こそが、このプログラムの面白さだ。

現代人はいつだって忙しない。各プロジェクトには具体的な設計図やマニュアルをつくり、それに沿って忠実に進めていこうと努力する。だからこそその過程で、目の前の物事に気を取られて頭がいっぱいになる…なんてことは、誰しもある経験だろう。

一度「設計図を作る」を取り払ってみたら、一体どんなことが起こるだろうか?

めちゃくちゃ面白いことが起きるかもしれないし、失敗するかもしれない。

でも、そんな出会いの偶然性に身を任せたとき、モノの「本質」はもちろん、その「周縁」までも目を向けることができるのではないだろうか。

12月20日(月)には、FUSEを会場に「こんなもの作っちゃおう座談会」が開催される。集めてきた素材をお題として、会場に集まった人々で大喜利形式に様々なアイデアを出し合ってみる。

他分野、異業種との出会いや、そこから生まれるイノベーションに興味を寄せるみなさんにぜひご参加いただきたいと思う。

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