COLUMN

いっぷく

文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。

vol.51

場とパフォーマンスの力

(プログラム・ディレクター 鈴木一郎太)

 11月3日文化の日に藤枝市谷稲葉の竹林にて、ひかり市民センター事務局主催の「竹林劇場」が開催されました。

 会場となった竹林は適度に伐採され、観客のいる低い位置には竹チップが敷き詰められていて、その上に9枚の畳を並べた舞台が設えらえていました。その背後には山の斜面が立ち上がっており、そこに生えた竹の間を縫うようにダンサーの動線となる道がつくられていました。斜面上部には、いかだのように竹材を組んだ小さな舞台が3つ、地面にしっかりと根をはった竹を柱にして中空に固定され、それよりもさらに高く伸びた竹が青々とした晴天の空と交わるところまで、観客の目線を引き上げてくれました。そんな会場に、3名のダンサーとギタリストが登場し、場と交感するような静かなパフォーマンスから、セリフを交えたコミカルな仕立てのものまで、子気味よく場面が変わるパフォーマンスが展開され、会場に集まったいろいろな世代の人を楽しませていました。

 会場へは、駐車場から歩いて山の中の小道を進むのですが、入口にある築100年余りの古民家ではマルシェが行われ、^その先蛇行する小道では木々の生い茂りにぽっかりと穴があいて茶畑が広がったり、小川の対岸に果樹らしきものが手入れされて植わっていたり、会場までの道のりも楽しく、それも含めてイベント会場としてポテンシャルがあるように感じました。

 また、周辺から聞こえる音や、なんとはなしに置かれた物がパフォーマンスの一部のように感じられ、それは自分がパフォーマンスを鑑賞するつもりでそこにいるために目や耳の感度が自然と高くなっていたのだなと振り返って思いました。特にこの日は時折、風が吹き、それによって音を鳴らす笹の葉や、ぐうんっとしなる竹の姿が自然の演出として感動的でしたし、人が地面の上を歩く足音や衣擦れ、遠くの鳥の声等の音が強調され、あらゆる音がこの場所めがけて発生させられているのではないかと錯覚してしまいそうな感覚がありました。

 終演後は、自然と子どもたちが高いところにある舞台に上がってアスレチックのようにして遊んでいたり、切り出した竹を紐で吊ってマリンバのようにした楽器を使っての即興演奏が始まったり、盆踊りを始める人達がいたり、思い思いにパフォーマンスの余韻を表現する人たちの姿が印象的で、そのように触発するのは場やパフォーマンスが持つ力なのだろうと思いました。

 この時はあくまで終演後の遊びですが、それらが別の活動に派生する等、地域との連動につながり転がっていくことがアートプロジェクトの大事な一側面だと思うので、第1回の成果を踏まえた今後の展開を楽しみにしたいと思います。

 当日の様子は、編集をして後日公開されるようですので、公開時にまたご案内させていただきます。

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