文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。
いっぷく
vol.41
松葉かきを
「生活」の循環にもどす
(プログラム・ディレクター 鈴木一郎太)
7月23日(土)にアート×保全の第3弾「祭り気分で松葉かき」が開催されました。
SPAC俳優の宮城嶋遥加さんプロデュースの下に進むプロジェクト。今回は、ゲストに迎えた同じくSPAC俳優の吉見亮さんにその場で指導を受けた清水南中・高ダンス部のみなさんが松葉かきの現場で演奏を披露しました。
3組が代わる代わる演奏しましたが、3組目には一般参加の方も飛び入りをしていて、進行のゆるさがいい呼び水になったように感じました。この時は楽器を手にされていたように思いますが、その場にあった流木を打ち鳴らす人の姿も見られ、茶摘み歌や田植え歌といった労働歌につながっていくような妄想をかきたてられました。
松葉かきは、もともと油分の多い松葉を燃料として使うため日常的に行われていましたが、家庭の熱源がガスに置き換わったことでその必要がなくなったようです。
取られなくなった葉は腐って土の養分となり、養分と水分を含んだ土壌がつくられることで、松以外の植物にとっても生育しやすい環境となってしまい、放置するとそれら他の植物によって松の生育に必要な日光がさえぎられてしまうことにつながると言います。
三保松原はちょうど100年前の1922年(大正11年)に日本初の名勝に指定され、ガスの普及以降も地域の財産を守る意味で松葉かきは地元の方々によって続けてこられています。
一方で、その位置づけを考えてみると現在の松葉かきは日常生活に付随する「活動」で、以前の燃料としての松葉を集めるのは「生活」の一部であり、結果は同じでも、別物と言えます。いずれにしても地域の財産が守られる大事なことですが、3Ringsプロジェクトのアート×保全の活動はパフォーマンスや楽しみの要素を取り入れ、保全活動を「生活」に位置付け直した新たな形を探っているのではないかと思います。それによって、生活と保全と資源活用に無理のない循環が生み出されるという展望が先々描かれるのかもしれません。
また、その場はパフォーミングアートに関わる人たちが地域の中で表現する場になると同時に、日頃いわゆる表現活動に携わっていない人たちの表現を引き出すような取組でもあると思います。労働歌はそのひとつの形かもしれませんし、全く予想もしていなかった何かに結実するのかもしれません。
元々、企業や地域の学生という地域住民以外の人たちの保全活動への関わりをつくっていこうとされている3Ringsプロジェクトですので、アートの関わりによる触発を通じてそこに集まる人たちの表現が様々な形で立ち上がることを楽しみにしています。
次回のアート×保全の取組は年明けまで少し間が空きますが、3Ringsプロジェクトによる通常の保全活動は、毎週土曜日10時半~12時に行われます。参加される方は事前にLINEで申し込むということですので、以下のリンク先をご参照ください。
三保松原3Ringsプロジェクト facebookページ
https://www.facebook.com/3Ringspj