CULTURAL RESOURCE DATABASE

ふじのくに
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浄蓮の滝の女郎蜘蛛

その昔、湯ヶ島に住む与市という農夫が、野良仕事の帰りに浄蓮の滝の横を通り過ぎようとした時、足に蜘蛛の糸が幾重にも絡みつき、身動きがとれなくなってしまう。
その糸を近くにあった切り株に巻きつけ立ち去ろうとすると、切り株が空中に舞い上がり滝壺へと吸い込まれていった。
その時、滝壺から「今日あった出来事は一切他人に話してはならぬ!」と轟音と共に怪しい女性の声が聞こえてきたという。
与一はその言葉に従い、その時のことを他人には話さず、真面目に働くことで名主にまで上り詰めた。
さらに滝周辺の樹木の伐採を禁止することで、平穏な暮らしを送ったという。

それから時は経ち、数十代のちの後裔与左衛門の時代、彼は部落の掟を破り滝上の木を切ろうとした際、手を滑らせ大切な斧を滝壺に落としてしまう。
斧を探そうと滝壺へ飛び込むと、この世のものとは思えないほどの美女が姿を現し、「斧はお返ししますので、今日のことは絶対に他人に話してはなりませぬ!」と言い残し姿を消してしまった。
与左衛門は、その美女は滝の主である女郎蜘蛛にちがいないと恐怖し、それからというものは、恐怖から逃れるように酒に溺れる人生を送ることに なった。

そしてある村祭りの夜、与左衛門はそのことを村の人たちに面白可笑しく話をしてしまうと、突然雷鳴が轟き白い火柱が家を真二つに引き裂いて、 中から目をらんらんと輝かせている不気味な大蜘蛛が姿を現したという。
与左衛門は、後日冷たい屍となって滝壺から浮かび上がってしまったと伝えられています。
参考:まんがたり

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