文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。
いっぷく
vol.59
成果報告会の“報告” その1/アートか地域か⁉ 住民プロデューサーの本質に迫る
(プログラム・ディレクター 北本麻理)
去る2月に開催された「文化芸術による地域振興プログラム」成果報告会の中で、実施団体が5グループに分かれ、テーマに沿って語り合ったグループワークの内容と考察を、各グループの担当プログラム・ディレクター、プログラム・コーディネーターがそれぞれレポートにまとめました。 本コラムvol.59~63では、『成果報告会の“報告”その1~5』 として、各レポートを公開しています。
■2023年度「文化芸術による地域振興プログラム」成果報告会
日 時:2024年2月12日(月・祝) 13時~17時
会 場:【BiViキャン】静岡産業大学 藤枝駅前キャンパス × 藤枝市産学官連携推進センター
参加者:2023年度「文化芸術による地域振興プログラム」実施団体、一般参加者など
県内各地でアートプロジェクトの実践を行っている助成実施団体が集まるのは年に2回。年度初めに行う『キックオフミーティング』と、この『報告会』。
『キックオフミーティング』は「初めまして、よろしく、頑張ってこうね」だとすると、『報告会』は「あんなこと、こんなこと、そんなことまで、“聞いて聞いて!”」という状態になってきたなと、3年目にして思う。
『キックオフミーティング』も『報告会』も、いつも公開して行っている。
誰でもいつでも話を聞きに、誰かに会いに来てください、というオープンな気持ちを常に持ち続けていたいから。
そんな思いもあって、会場は藤枝駅前の商業施設にあるスケルトンの会議室を選んだ。
会議室だけど“会議”ではない“アートプロジェクト”な『報告会』。
“アートプロジェクト”な『報告会』のテーマは、「発明へのプロセスをともに体験すること」。
詳しくは、各レポートをご覧ください。
アートか地域か⁉ 住民プロデューサーの本質に迫る
「たまごが先か、にわとりが先か」
もともとタイトルには、この因果関係の迷走を表す語句を付けていたが、文字が多くなるので外した経緯があるし、よくよく考えると「どちらが先か」を考えたかったという訳でもない。
では一体何を考えたかったのか、話し合いたかったのか。
話し合いからはそれぞれが考える、「アート」や「地域」への思いや気持ちといった“捉え方”に辿り着き、辿り着いた言葉を駆使して語る多くの「住民プロデューサー」に巡り合えた。
「アート」については、絵画や彫刻、ダンスや演劇などの「作品」を直接指し示す言葉ではなく、「他者にも目を向ける」「創造性に触れる」などの《行為》を示す言葉で説明していて、《表現(行為)》に向き合っていることの表れだと思う。
“創り出すことに触れること”
“自分のためだけにやっていない”
“身近な自己表現”
また、「地域」については、活動の狙いや誰に届けたいか、共創したいかによって、「地域」が何を指しているかしっかりと見定められており、団体ごとに捉えている「地域」に違いがあることも確認できた。
“生活に接する場所”
“住んでいるところによりけり”
“(地元から離れていた時は)同級生に会えず寂しい”
3つの団体から出てきた共通ワードは、
・子ども(子どもに伝えたい。繋げたい。)
・海(海を見て育った。海を守りたい。)
といった言葉が頻繁に出てきた。
これも住民プロデューサーが、地域を表す言葉となっているはずである。
意図はしていないが女性が多い集まりとなった話し合いだったので上記のような言葉が多かったのか、それとも性別は関係ないのだろうか。
構成メンバーが変わると違う言葉に辿りつくのか、、、またそういう機会も考えてみたい。
住民プロデューサーの言葉を聞くことで、「アート」の捉え方と表し方がいくつもあること、同様に「地域」も住民プロデューサーの捉え方によっていくつもの考え方や接し方があることを確認できた。
これは「アートか地域かどちらが先か」を選ぶようなものでもないし、「アートも地域も、解は1つ」ではなく「解はいくつもある」ことがわかった。
こうやってあらためて文字にすると「当たり前」に思えるようなモノゴトだけど、「当たり前」に気づくこと。
いまこの時代に、「当たり前」を堂々と語り振る舞う住民プロデューサーの存在が、とても心強いと力をもらった一日だった。
アートか地域か⁉ 住民プロデューサーの本質に迫る
(話合い団体)
一般社団法人 熱海怪獣映画祭
Working Space Bagatelle
特定非営利活動法人ヒト・マチ・プロジェクト