COLUMN

いっぷく

文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。

vol.8

「+IZU ~〇〇だけじゃないIZU〜」

KURURA vol.9 いよいよ始動しました!

(プログラム・コーディネーター 佐野直哉)

真夏の眩しさが際立つ7月某日。

伊豆・修善寺駅に降り立つと、東京オリンピックの自転車(トラック)競技が開催される伊豆ベロドロームの最寄り駅ということもあって、駅周辺はオリンピック一色、沢山のボランティアの方々がいらっしゃいました。


その盛り上がりを背に、駅からすぐのイタリアンレストランでもあり、自転車愛好者が集まる地元のハブ的な存在のThe Crankにて、KURURA「プロから学ぶ」講座第1回 が開催されました。

KURURAは、伊豆市及び近隣の子ども達とプロのデザイナーがコラボして創る伊豆の観光情報誌(フリーペーパー)です。

2013年から毎年度1号発行しています。

「KURURA vol.9」制作プロジェクトは、令和3年度「文化芸術による地域振興プログラム」の一つとして実施されています!

伊豆市在住の小学4年生から中学生までの20名が集まり、冊子作成の際に必要なスキルや視点をその道のプロから学びながら実際の取材に活かすことがこの講座の趣旨です。

3回に渡って5人のプロから、編集ラフづくり、イラスト、ライティング、新聞記者(取材方法)、カメラマンからそれぞれのスキルのエッセンスを学び、チームに分かれてディスカッションしながら、現場に行く前に取材のイメージを共有していきます。

初回はラフづくり講座でした。

講師はフリーランス編集者でありライターとして30年のキャリアを持つ有川さん。

まずはVol.9のテーマ「+IZU ~〇〇だけじゃないIZU〜」を読み解くところから始まりました。

「ただのおしゃれな観光小冊子ではなくって、伊豆らしさとはなんだろう、プラス伊豆の要素を考えて欲しい」

と、問いを投げかけました。

その上で取材の前に何を準備したら良い記事が書けるかのお話に。

そのエッセンスはこんな感じです。

1. 取材先の情報を調べる・ホームページやパンフレットでどんな施設や場所か調べる。
・特徴などをノートに書き留める。
・自分がわかる言葉で簡単に。
2. テーマに沿って考える・今回のテーマの視点を忘れないで、取材先の情報を整理しよう。
・ただ単なる観光ガイドブックにならないように。
3. ”そこならでは”の探し方 ・公式ホームページなどをよく見るとポイントが書いてある。
・大事な点はメモる。
・調べて色々わかってメモしたことをチームで共有、話し合ってみよう。
・取材先にどんなイメージを持っているかをすり合わせよう。
4. どういうページを作るか意見を出し合うたとえば…
【天城山はいくつかの山の峰全体を言う】
  →その山の連なりを写真で見せたい。
【5月6月はシャクナゲが美しい】
  →シャクナゲが咲いている登山道の写真を入れたい。
   ⇒でも今は咲いていないからイラストにしよう。
【百名山にもなっている有名な山で登山客が多い】
  →なぜ天城山に登るのか?
  取材に行ったときに登山客に聞いてみよう。

いかがでしょう。 大人にもすごく参考になる話ですよね。

ラフについての説明ののち、チームごとの担当ページのラフを作ってみました。

そしてお互いにプレゼンし合いました。

有川さんはそれぞれのプレゼンにアドバイスをしながら、最後に、

「でもこの通りに絶対なりません」

その言葉に 一同びっくり。

…その意図は、

「この通りに写真が撮れるとは限りません。

だけど前もってラフがあれば現場で撮れた写真でページをどう構成するか、情報も自分で取捨選択できるようになる。

イメージを持って取材できるようになる。」

ということだそうです。


編集の講座は今年初めての試みだったそうですが、

最初にどんな雑誌にしたいのか、どんなページに仕立てたいのか、

それらをどう共有して、チームの多様な意見の落としどころを決めるのか、

そして実現にはどんなスキルが必要なのか、それらをまさに実体験できる場となりました。

これは実は大人の世界のいわゆる「組織マネジメント」「タレントマネジメント」「プロジェクトマネジメント」につながる根本を学んだように思います。

また、参加者が伊豆の「何を伝えたいか」を自分自身に問い、

出てきたアイディアをチームと共有しながらブラッシュアップしていく過程を「編集」という形で体験する、

実際に取材を経て、「何を伝えたいか」が変化していく、

もしくは取材先と話してみて今まで見ていた当たり前の景色が他人には当たり前でないことに気づくかもしれない、

そうした可能性を子ども達は無意識ながらも直感したことでしょう。

KURURAの講座と取材はまだまだ続きます。

冊子が完成する頃に参加者からどんな声が聞けるか、今から楽しみです。

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