むかし、駿河の人と相模の人と、伊豆の人の三人がどうしてか同じ宿に泊まりあわせたそうな。夕飯を食べながらお互いに国がとなり同士という気安さから、誰ともなくお国自慢がはじまりました。
駿河の人が「おらあ国さの富士山はな、広い日本だれ知らぬ者はいねえ、日本一の山だ。この富士山になあ、ちょっくらしおろして、駿河湾の水で足を洗うような、それはそれは大きな男がいる。」
すると相模の人は「ほほう、それぐらいではまだまださ。わしらの国に行ってみな、とてつもねえでっかい牛がいてな、琵琶湖の水をたった3口で飲みほしてしまうぞ。」と言いました。
今度は伊豆の人の番です。「おらの国の天城山にはでかいケヤキの木があってな、そのどう周りの太さは、とてもとても手では刈れない。大の男が一周するには、どうしても3日はかかる。何しろ枝や葉は天をぬきでているからな。」
そこで駿河の男が口をはさみます。「そんなでっかいケヤキの木いったいどうするんだ。」伊豆の男「そうさな、でっかい太鼓にでもするさな。」
相模の男はまさかと笑いながら「でっかい太鼓もいいがそんな太鼓に使う皮はないだろう。」伊豆の男「おめえさんち国の大牛の皮を張るのさ」
駿河の男が「でもな、そんなでかい太鼓ができても、その太鼓は誰がたたくんだ。」と口を挟みました。
「そうなりゃ、駿河の富士にこしかける男にたたかせるのさ。どんなもんだ、どんなものかね…。」
といったとさ。
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