COLUMN

いっぷく

文化やアートをめぐるさまざまなこと。
アーツカウンシルしずおかの目線で切り取って、お届けします。

vol.20

偶然と必然

(プログラム・ディレクター 北本麻理)

地域を訪ね、人を訪ねる旅、マイクロ・アート・ワーケーションの「旅人」募集が先日終了し、予想をはるかに上回るたくさんの応募をいただきました。

そんな中、ふと私自身が仕事で訪ねた地域での、出会いの偶然と必然と、ときめきの思い出が蘇り…

東日本大震災のあと訪ね回り、出会いの繰り返しだった日々。
復興のなか、全てのエネルギーが祭に集まった岩手県上閉伊郡大槌町。
祭を追いながらふと立ち寄った、ショッピングセンターにある書籍との出会いが、郷土芸能との出会いとなり、その後、伝承館(芸能の稽古をしたり、集会・宴会したりする場所)にレジデンスできることに繋がった出来事。

出会いと、関心と、いつもより少し積極的な行動力。

その時の文章がFacebookにあったので、長文ですが引用します。


三陸 〜人と芸能に巡り会う旅〜

上閉伊郡大槌町(大槌まつり) ~ 釜石市唐丹町花露辺地区
2014年9月20日、21日

大船渡から車で1時間と少し。 上閉伊郡大槌町の大槌まつりに参加してきました。

去年の夏に行った時と比べて盛土工事が進み、様子が変わった大槌町。

サンフェスに出演いただいた城山虎舞を探して復幸きらり商店街へ。 店舗への門付けをされているところに立ち会う。

最後の手踊りがとても好き。 ちょっとドリフなんだけど、それも日本の芸能らしくていいなぁと。

その後、魚市場へ移動。

良い天気に恵まれた分、海の向こうには島や岬が見え、舟には大漁旗。

普段は魚が並んでいるだろう場内には神輿が置かれ、その前で各団体の芸能が奉納される。

ちびっこからお年寄りまで、神様の前で全身全霊で唄い、舞い、熱気がほとばしる。 ちびっこのいっちょまえな感じにやられてしまう。

そしてこの日のクライマックス。 小槌神社での奉納。

夕暮れ時から夜の9時まで、境内に大槌中の芸能が集まり、団体毎に舞を奉納する、のだが、1団体づつではなく、同時に2ヶ所(しかも至近距離)で舞われるので、あっちのお囃子とこっちのお囃子がミックスされて、時間の経過と共にどんどんカオス状態。

1カ所は鹿子踊の団体のみ。 もう1カ所は虎舞、権現舞、神楽、七福神などなどが入れ替わり立ち代わり。

見ていて面白かったのが、虎舞、権現舞、神楽、七福神もまずそれぞれ頭を付けてそれぞれの個性がわかる演舞をして、その後は手踊り。

この手踊りがどこか似ていて、ルーツを感じさせる。 興味深々。

翌日は街中での練り歩きに参加。

前日、大槌にあるショッピングセンター「マスト」の書店で入手した「被災後を生きる – 吉里吉里・大槌・釜石奮闘記/竹沢尚一郎著」に記載のあった臼澤鹿子踊の伝承館にどうしても行きたい、と思っていたら御旅所のひとつになっているのを発見!

急いで伝承館のある臼澤地区へ移動。

「マスト」から車で5分程移動し山側にある伝承館に向かうと、ちょうどその最奥の森に囲まれるように伝承館が。 広い庭と祭りの際は100人もの人が食事をとったり休憩したりする建物。

その庭に神輿が置かれその前で臼澤鹿子踊の演舞。

深い緑を背景に、風になびくカンナガラと色とりどりの衣装。 太鼓は踊り手に仕掛けるように打ち鳴らされ、それを取り巻くように笛の音が重なる。

自然と人とが一体になる瞬間。

演舞を終え食事休憩をされている皆さん。 そして、誰かに話しかけたくてウズウズしだす私。

そんなときにちょうど外でお一人ウロウロされている方発見。 しかも味のある感じの佇まい。

「地区の名前も人の名前も臼澤さんなんですね」というちょっと気になっていた事を伺うと、この方もなんと臼澤さん。

そこから、鹿子踊のこと、伝承館のこといろいろ伺い、豚汁とご飯をごちそうにまでなりました。

大槌には鹿子踊が5団体あり全団体が集まって、衣装であるカンナガラを取るドロノキの植樹とそれを記念して全団体での群舞を今年初めて行われたとか。

内陸の鹿子踊ともどんどん植樹で繋がって、どんどん群舞をしていく、という構想があるそうで。

最後は会長さんも交えお話を伺いましたが、お二人ともとても嬉しそうにまた誇らしく語っていられたのが印象に残っています。

そんなこんなで大槌で経験したことに興奮しきってしまった私は、これはぜひ習いに来たいと思っています。

さて、大槌から大船渡への帰り道、ずっと話しには聞いていた南部藩と仙台藩の境目、釜石市唐丹町がどんなところなのか、実際に行ってみたかったので、ちょっと寄り道。

唐丹町の芸能を調べながら辿り着いたのが、花露辺(ケロべ)地区

山中の国道をぐるりと行くと眼下に港町の小さな集落が。

歩いてもすぐに一周できるようなコンパクトな集落。 海に向かう坂に路地が広がり家々が建つ。

ここに滞在しながら生活や芸能を学べるといいなぁ、とかこれまた興奮しながら車を走らせていると、作業中の男性陣に遭遇。

「ここにはどんな芸能があるのですか?」というところから始まり、お話がどんどん進んで、地区の集会所にお邪魔してじっくりお話を伺いました。

実は町内会長さんだった下村さんに、唐丹町の芸能のこと、漁業のこと、震災のこと、そして震災から現在までのこと、たくさんお話しを伺いました。

この地区は現在建築中の家屋が完成したら(年内予定)、高台移転は終了とのこと。 集会所のある復興住宅もマンションのようで、かつ漁具のメンテなどができるように廊下やベランダが広くとってある。 エントランスの前にも洗い場がある。

被災時のことやこれまでの経緯を聞いていると、下村さんの行動力の凄さと信頼度を伺い知ることができるし、コミュニティの理想なのかもしれないと思う。

下村さんは町内会長だけでなく唐丹町歴史研究会(だったかな)も興されていて、出る話聞く話すべてがとても興味深い。

花露辺では花露辺海頭荒神太鼓という芸能があるとのことで、道具の倉庫も案内していただく。 太鼓とともに衣装も保管されているのだが、その衣装のひとつの羽織をひょいっと渡してもらう。

「やっべ」「また今度それ着てコラボしよう」

ということで、これまた習いたい芸能に出会う。

芸能を介して人に出会う。 そして、暮らしに出会う。
出会いが常に自分の財産となっていく。

みんな気持ちがいい人ばっかりなんだなぁ。
だから大切にしていく。

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